英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

トランプ再選は本当に難しいのか

 トランプ氏の再選はすでに相当危うくなっているとされる。バイデン氏はほとんど選挙活動をしていないのに、トランプ氏をリードしている。

 政治にはこういう格言がある。「あなたの反対者が自分の足を撃ったときは、彼の銃を取り上げるな」

 大統領選が本格的に始まっている。トランプ氏はもって生まれた優位さがある。社会的距離を置くルールは、ジョー・バイデン氏にとって彼が拠点とするデラウェアに限定された、活動量の低い動きしかできないことを意味している。

 このような公衆衛生上の利点に見舞われなければ、トランプ氏は鉄の支持者にアピールする選挙運動を始めていたかもしれない。しかし、最初の選挙運動の地であるオクラホマのタルサでは、トランプ氏が逃げ出したくなるような問題が生じた。どんどん不人気になっているのだ。

 過去2カ月以上にわたり、トランプ氏の支持率は急低下している。その理由は第一に、激しく批判されている彼のコロナウイルス対応だ。そして、最近ではジョージ・フロイド氏の死に対する反人種差別的抗議活動に対するトランプ氏の反応にある。

 大半の先進国ではコロナ感染者を抑え込みつつあるが、木曜日時点の米国においては、新規感染者数が南部の州で最大を記録した。

 同時に、国の分断をあおるような人種差別的なコメントをして、大統領は酷評されている。人種差別に抗議する人々に対峙するため、軍隊を送ろうとした。歴代大統領であるカーター氏やブッシュ氏もトランプ氏を直接、間接的に批判するほどだ。

 そして、前国防長官のマティス氏やボルトン氏は、トランプ氏は軍隊の最高司令官としての資質に欠けると批判している。

 教会で写真を撮るために抗議デモの群衆を催涙ガスを使って押しのけるような行動をしたトランプ氏に対し、エスパー国防長官らは謝罪するまでに至った。

 今年初め時点まで、上院の弾劾裁判で無罪となり、経済が上向く兆しを見せているまでは、彼の再選はゆるぎないように見えた。しかし、現在では、民主党予備選挙で勝利すらおぼつかなかったバイデン氏が、トランプ氏を2ケタ以上リードしている。

 最新の世論調査によると、バイデン氏はトランプ氏を14ポイント、リードしている。「スウィング・ステート」と呼ばれる選挙戦を左右する重要な州の動向は一層トランプ氏にとって不吉な状況だ。

 2016年の選挙でトランプ氏はペンシルバニアやミシガン、ウィスコンシンなどで僅差ながら勝利した。しかし、これらの州で6~9%ポイントのリードをつけられている。そして、1976年にカーター氏が勝利して以来、共和党が強いテキサス州でも、バイデン氏が肉薄している。

 ホワイトハウスにおけるトランプ氏の姿をみると、トランプ氏はへこんでいるように見える。トランプ氏の選挙陣営は100万人の支持者がチケットを欲しがっているとしながら、タルサの集会ではわずかに6200人しか集まらなかった。

 トランプ氏は復活できるのか。2016年の勝利という衝撃以降、政治の世界の誰も、トランプ氏を仲間から排除していなかった。過去数カ月間で起きたように、今後急速に事態が変化する可能性がありうる。政治の世界では4カ月というのは数年を意味するのだ。

 「バイデン氏は依然バンカーにはまっている」という指摘もある。バイデン氏はうまく隠れていることができず、仮に表に出ると、バイデン氏の誤りが世にさらされる。そして、人々は現実の選択を迫られることになる。トランプ氏が復活する時間はたっぷりあるというのだ。

 トランプ氏は女性や高齢者の支持を失いつつある。しかし、経済政策についてはバイデン氏よりもトランプ氏のほうがうまくやれると考える有権者は多い。問題は経済回復のペースだ。

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