英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

イールドカーブに何が起きているのか

 晴れ。

 日本の安倍政権は3年ぶりの経済対策を打つ。2016年以来となる経済刺激策である。世界経済の減速や消費税のインパクト、東京五輪後の影響を防ぐ狙いだ。

 政府高官は、超低水準の金利を生かし、公共投資のために資金を調達し、機動的で、包括的なパッケージをつくるとしている。

 こうした計画されている刺激策は、世界全体がより緩和的な財政政策に向かっている点で関心を集めている。菅官房長官は15カ月予算に沿って経済計画を策定中であると述べた。

 これは2019年予算年度の補正予算も活用する。予算規模はまだ決まっていないが、今年の災害復興予算が含まれる。

 菅官房長官は同時に、中小企業や農業、地方創生のために、生産性を引き上げることにも予算を活用すると述べた。

 https://www.ft.com/content/8ee711dc-01e5-11ea-b7bc-f3fa4e77dd47

 FTのGavyn Davies。イールドカーブ論。

 債券市場は、Fedが十分な行動をとっていないと考えている。

 FOMCは、今年いっぱいを通して続く金融緩和策をこれほど長く休止することを予見していた。今年初めに約束していた利上げを続ける代わりに、25ベーシスずつの予防的利下げを夏以降、行った。

 利下げ後の記者会見でパウウェル議長は、この調整は米国の金融政策をより良い位置に据えるためのものだと述べた。そして、Fedは次の金利の動きについて、示唆を与えなかった。

 パウウェル議長は、現在の金融政策スタンスが緩和的であるかどうか尋ねられた。議長の答えは、「いくらか緩和的」というもので、Fedの経済見通しを支持するうえで適切なものだ、と答えた。そして、米国の現在の均衡金利を合理的に推計する幅が存在すると述べた。そして、この均衡金利を下方修正しているという。

 これは大変興味深い論点である。最近の債券市場におけるイールドカーブが示すことは、市場はFOMCの金融政策を緩和的でも適切とも考えていないということだ。むしろ、均衡金利が低下しており、Fedの最近の動きはそれについていくための動きであると評価している。

 この状態はTIPS市場で観察されている。もし投資家らが、利下げによって成長が促されると信じているのなら、短期金利に比べて長期金利が上昇するはずである。すなわち、イールドカーブはスティープ化するはずだ。しかし、TIPS市場におけるイールドカーブにはほとんど変化はない。

 では、何が起きているのだろうか。合理的な解釈の1つは、市場はいわゆる長期停滞に関心を持っているというものだ。サマーズ氏らの最新の研究によると、世界経済の均衡金利はここ数十年間低下し続けている。それは特に民間セクターで顕著である。

 民間の貯蓄を減らし、民間投資や財政再激策を促す新たな政策がないことにより、均衡実質金利は先進国でマイナス領域に落ち込んでしまったという。債券市場で起きていることはこうした現象を支持しているように見える。ドイツや日本と比べてそうした長期停滞論が当てはまりにくいと思われていた米国についてもそうだ。

 米国の債券市場は、均衡実質金利を従来の1パーセント前後から、0%前後まで低下させている。

 https://www.ft.com/content/71f0ffae-fb0d-11e9-a354-36acbbb0d9b6