今日も曇空。
プロジェクトシンジケートより、アデア・ターナー元長官。
去年の秋まで世界経済はデフレの罠に捉えられていたように見える。5年連続でIMFは中期成長見通しを引き下げていた。
しかし、それから6ヶ月しか経過していないのに、見通しはすっかり変わった。成長やインフレについての見通しが良くなった。たしかに、米国の第1四半期の成長率は回復の力強さに疑問を投げかけるものだった。しかし、少なくとも失望の連続からは抜け出したように見える。
成長見通しが良くなっているのは、財政政策が緩んでいるからだ。とくに中国の財政赤字が拡大していることが大きい。これはIMFが指摘しているように、財政政策の再評価と金融政策だけで回復を達成できるという信念が否定されているからだ。
実際のところ、財政政策は2008年以降、非常に重要な役割を果たしてきた。米国においてGDP比で平均11・2%にのぼる財政出動が欧州よりも早い回復をもたらした。しかし、米国は2011年から、欧州は2012年から財政緊縮に転じた。将来の公的債務を限定する観点から、緊縮財政は不可欠に見える。
しかし、金融緩和だけで経済をデフレの罠から逃れさせるには不十分であり、間違っている。投資や消費はもし債務残高が大きい場合は金利低下にあまり感応的ではない。
もし金融緩和が財政拡張を促進するのであれば、経済を刺激するだろう。しかし、もしルースな金融政策が公的債務の発行を容易にするのであれば、この債務はどうやって償還されるのだろうか。
先進国の債務は2016年時点ですでに2%ポイント上昇している。リカードの等価命題によると、合理的な納税者が将来の増税を見込むので、財政刺激は効果的でないことになる。
いくつかの国において、公的債務の真似たいぜーションは不可避のようだ。中央銀行が国債を購入し、永遠に借り換えに応じることで可能になる。たとえば日本である。もはや維持可能なレベルまで公的債務を引き下げる信頼に足るシナリオは存在しない。
https://www.project-syndicate.org/commentary/fiscal-stimulus-central-bank-independence-by-adair-turner-2017-05
上記でターナー氏が挙げているIMFの財政報告書。
https://www.imf.org/en/Publications/FM/Issues/2017/04/06/fiscal-monitor-april-2017