英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

失われたケインジアン

 晴れ。
 海外メディアの黒田緩和に対する関心が高まっているのは事実のようだ。一例が、FT電子版の「日本〜デフレ戦争」と出した特集ページ。最新の記事は、BOJの黒田総裁は債券市場の安定を約束した、と題するものだ。
 何人かのアナリストは、こうした相場の変動は、政府の成長戦略の主要目的をだめにする恐れがあると指摘している。
 http://www.ft.com/intl/in-depth/japan-war-on-deflation
 ロゴフ教授が「欧州の失われたケインジアン」と題する論考を寄せている。教授によると、欧州危機の問題の本質はケインズが対処しようとしたことにあるのではなく、欧州の財政・金融統合がうまく進んでいない、構造問題にある。そして、現実的な政策対応をしようとすれば、欧州周縁国の債務のライトダウンに向き合わざるをえない。そして、年来の主張である、財政再建こそ欧州の債務問題を解決する、という「マントラ」を繰り返す。
 もちろん、軽い(moderateな)インフレによる債務調整の可能性についても否定していない。
 これらのゆくえのカギを握るのはドイツではなく、フランスである。ドイツ一国でユーロの運命を背負いきれないからだ。短期的な成長を維持するには、ケインジアン流の一時的な需要創造の処方箋は有効かもしれないが、フランスの長期的な競争力の問題を解決するわけではない。
 http://www.project-syndicate.org/commentary/a-structural-focus-for-the-euro-crisis-by-kenneth-rogoff
 そして、ロゴフ教授に対するデロング教授の感想。ドイツが政府支出を拡大して需要とインフレを起こせば、相対的なフランスや南欧諸国の競争力が高まり、債務問題は軽減されるのだろうか。
 ドイツの財政拡張は4つの「鳥」を殺してしまう、という。
 http://delong.typepad.com/sdj/2013/05/ken-rogoff-for-europe-debt-relief-for-the-periphery-not-fiscal-expansion-at-the-core.html#comments
 そして、クルーグマン教授が、ロゴフ寄稿に反論している。過度の緊縮財政は失業率上昇を通じて、ヒューマンキャピタルを無駄にしてしまう。また、周縁国における緊縮財政は、中核国における財政刺激策と一部はオフセットできると主張する。
 http://krugman.blogs.nytimes.com/2013/05/25/europes-keynesian-problem/