英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

低インフレ革命

 ロバート・シラー教授。規制のない、自由市場は本当に信頼に足るのか。問題は、その信念に欠陥があることだ、と説く。
 アカロフ教授との新しい共著で、自由市場理論へ疑問を投げかけている。自由市場経済は非常に重要な概念であるが、それがうまく機能するには、市場の規制が死活的に重要であるという。
 もちろん、アカロフ教授もシラー教授も自由市場経済の信奉者である。しかし、標準的な経済理論は規制のない自由市場経済にあまりに熱心になりすぎているという。これらの無前提な信奉は、標準的な人間の弱さと、それによる操作やだましの可能性を無視している。
 こうした操作が起きるのは、人間が性悪であるからではない。競争に押し出すマーケットの力の存在による。
 マーケットの規制に関して、転機となったのは30年前におきたレーガンサッチャー革命だ。これは複雑な結果をもたらした。
 http://www.nytimes.com/2015/10/11/upshot/faith-in-an-unregulated-free-market-dont-fall-for-it.html?_r=0
 新著はこちら。
 http://press.princeton.edu/titles/10534.html
 アントニオ・ファタス教授。金融危機から8年が経過し、Fedを初めとする中央銀行ゼロ金利政策をそれだけの期間継続している。だが、政策担当者は、以前の考えに凝り固まっている。危機は一度きりの出来事であり、こうした政策を続けていれば、いずれ危機前の水準に経済は戻るのだ、と。
 しかし、経済学者や政策担当者のそうした考えは誤っている。1970年代にスタグフレーションを引き起こした思考革命を思い起こすべきだ。スタグフレーションによって、当時の経済学界や経済政策の世界には金融政策のフレームワークに関する革命がおきた。単純なフィリップスカーブをもとに政策を考えることをやめ、インフレ対策や独立した中央銀行を志向するようになった。
 ほとんどの学者たちが想定もしていなかった事態が起きているのだ。たとえば、中央銀行は長い目でみても、インフレ率を引き上げることはできないのではないか。
 また、危機は相当の期間永続的に続くものであり、潜在成長率に永続的な影響を与えるのではないか。
 かつて日本のデフレの経験は、日本独特の、他国では起こり得ない特殊な事例として研究され、または経済学者が言及してきた。しかし、金融危機後の経験から判明したのは、日本の経験は特殊なものではなく、先進国経済においていつでも、どこでも起こりうる事象であることだ。
 では、かつてクルーグマン教授やバーナンキ氏が日本に対して処方箋として唱えたように、ヘリコプターマネーやインフレターゲット政策が中央銀行の手段として妥当なのだろうか。今となっては、そうした政策には魅力は感じられない。
 http://fatasmihov.blogspot.jp/2015/10/the-missing-lowflation-revolution.html