英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

インフレと大統領選で八方ふさがりのFed

 快晴。

 米国株は上昇した。労働市場が若干冷え込みの気配を見せており、利下げへの期待が逆に高まっているからだ。

 米国株は2カ月ぶりの活況を呈している。注目の雇用統計が公表され、事前予想を下回る結果となったからだ。投資家は今年後半の利下げを見込んでいる。

 4月の新規雇用者数は17.5万人の増加となった。これはブルームバーグ集計の事前予想が24.1万人だったのを大きくしたまわった。17.5万人という数字は過去6カ月間でもっとも小さい。

 パウエル議長が、23年ぶりの高い水準である政策金利の状態が事前に考えていたよりも長期化すると発言した後の出来事である。同時にパウエル議長は、次のアクションとして利上げに動くことはありそうにないとも述べている。パウエル議長は利上げを否定しているとはいえ、投資家の議論は強いインフレ指標の見通しに回帰している。

 先物市場は当初11月とみていた利下げのタイミングを9月に前倒しした。同時に年内の利下げ回数は2回というのが多数派になっている。

 2年ものの国債利回りは低下し、4.81%をつけている。

 失業率は少し上昇し、3.9%をつけた。2月と3月の数値の修正も小幅だった。エコノミストの間では今回の雇用統計をどう読むかで意見が分かれている。シティのエコノミストは、今回の雇用統計が労働市場の減速を示す最初の兆候であるかもしれないと、少し懸念を示している。企業が人件費をカットし始めている兆候と解釈できるからだ。

 https://www.ft.com/content/fad96dd0-7064-4a74-bffb-e74b9b28ac09

 そのパウエル発言について。パウエル氏は、金利が高い状態がより長期化するとのシグナルを送った。2%のインフレ目標達成に向けて、さらなる進展を期待していたが、それは現在欠けているとの認識である。粘着性のあるインフレとの闘いはまだ続く。

 水曜日のFOMCの後、2%の物価目標に向けた進展はなかったと述べた。利下げは遅れ、今年後半になるとの新たな言い回しである。

 2%の持続的な道のりに向けた確信を得るには、まだ長い時間がかかりそうだ、というのがパウエル議長の記者会見における説明であった。パウエル議長は、どれくらい達成に時間がかかるのかわからないと述べた。同時に利上げ観測については、明確に否定した。

 直近にインフレデータによると、燃料価格が上昇し、インフレ率が再び上昇し始めているサインがある。一方、今年第1四半期の成長率は減速の度合いを深めている。

 今回のFedのコメントが意味するのは、借り入れコストがより高くあり続けることを意味する。11月には大統領選挙を控え、多くの有権者にとって高負担が続く。Fedにとっては、インフレが上昇し、経済が減速、そして政治的に大統領選の時期が近づいてきており、行動の余地が劇的に狭まっているのが現状だ。

 中にはスタグネーションの可能性へ言及することも出てきたが、パウエル議長は1970年代型のスタグネーションの可能性は退けている。

 市場では米国債の入札が記録的な高水準で開催されている。その一方、Fedは量的縮小を進めており、それが物価や利回りの低下につながっている。

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