英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

対ロシア抑止力

 晴れ。

 ロシアを抑止するには?武器を素早く展開することが欧州にいま求められることであるが、その進展はゆっくりとしている。

 冷戦の終了以降、NATOが実行してきた最大のこととは、1月にスタートし、5月に終わるSteadfast防衛訓練である。31か国のNATO加盟国にスウェーデンを加えた9万人が参加する。この訓練の狙いは、NATOがいかに素早く部隊を北米や欧州全域から展開できるか示すことにある。仮想敵は近くに存在する国、すなわちロシアである。

 昨年のビルニスにおける首脳会議以来、NATOは30万人の部隊が高水準の出動準備状態を維持することを心掛けてきた。同時に、部隊の構造をどこから攻撃されても対処できるような状態に変えていった。冷戦期間中よりもNATO加盟国は増えたが、同時に、NATOはより長い国境を防衛する必要がある。

 訓練の結果、わかったキーポイントは、実際に危機が起きたときや危機に近い状態になったときに、国境を越えてより大規模な部隊を摩擦なく動くようにすることである。

 冷戦期以降、各国の規制や慣習の網にからめとられ、欧州を横断する形で部隊を展開することは難しかった。その一方、戦車を運ぶだけの強度を持つ鉄道や橋を整備することは無視された。

 ロシアによるクリミア併合以降、NATOEU双方にとって一番の優先順位の高いものは、こうした軍事的な移動の障害を改善することにあった。2016年にはEUNATOが共同で、最優先課題に挙げた。EUはその後も軍事移動に関する取り組みを「軍事版シェンゲン条約」と呼んで継続した。

 しかし、その取り組みの一つであるPESCOは失望させるようなものだった。理由は資金面の問題である。欧州委員会は軍事移動を支援するために95のプロジェクトを提案し、その資金として65億ユーロを提案した。しかし、加盟国の協議の結果、最終的には17億ユーロに減額された。

 2022年に起きたロシアによるウクライナ侵攻後、EUは急ぎ新たな計画を宣言した。追加の予算も決まった。今やオランダがドイツ、ポーランドと一緒になって北海の港からNATO加盟国の東部沿線に部隊を送る新しい計画を宣言した。元将軍によると、同盟国は例えば、ロッテルダムからポーランドの国境までに90時間以内に部隊を送る能力が必要だという。

 ウクライナ戦争が示したのは、戦車を運ぶ鉄道が死活的に重要であるということだ。しかし、ドイツの鉄道ネットワークは、軍装備を運ぶことのできるのは10%に満たないのが現状である。

 https://www.economist.com/europe/2024/03/07/moving-weapons-around-europe-fast-is-crucial-for-deterring-russia