英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

終わりなき量的緩和の危険性

 ラジャン氏。経済成長が非常に不確かなものになる中、中央銀行が毎月の債券購入を縮小することを慎重に進めようとするのは理解できることだ。しかし、量的緩和を長期化させることは、同時に非常なリスクを伴っていることも理解しておく必要がある。

 ここ数か月、米国ではインフレが高まっている。労働市場は非常に需給が引き締まった状態にある。

 これに対し、10年米国債金利は1.24%にとどまっている。10年のBEIは2.4%だ。株式市場は高値を更新し続けている。

 債券市場はおそらく、Fedが今のインフレは一時的なもので、政策金利は当面低位安定するだろうと信じている。もしそうだとしても、成長はし続け、インフレ率もFedの目標周辺にとどまる。

 しかし、このことは10年国債金利がなぜこれほど低位に安定しているのかを説明することにはならない。コロナ変異株の流行やインフラ法案の議会通過などにリスクがあるとみている。

 株高と債券高を説明する一つが、資産運用家による利回り追求がある。資産価格の安定を求める人々にとって、先週のパウエル議長の発言はよいニュースだろう。QEの縮小は金融政策正常化の最初のステップになる。

 しかし、QE縮小開始はすべての人を喜ばせるわけではない。20年に及ぶ低インフレは、多くの中央銀行家に、まだ時間がある、と思わせる根拠になっている。

 さらにいうと、金融政策担当者が資産価格やインフレに過度に関心を持たないとしても、QE長期化に伴うリスクを心配すべきである。それは、将来の金利急騰リスクに政府の財政がさらされていることである。

 過去20年間、政府債務は急増したが、利払いは低く抑えられGDP比のシェアは低位で安定してきた。

 https://www.project-syndicate.org/commentary/qe-bond-purchases-decrease-government-debt-maturity-by-raghuram-rajan-2021-08

 バイデン氏のポピュリスト的な、新たな経済政策集。バイデン政権が発足してから半年が経過した。前任大統領の破滅的な経済政策を修正する作業が残されている。

 問題は、バイデン氏の政策の多くがトランプ氏の政策と共通していることだ。それはオバマ政権の政策以上に共通点がある。

 トランプ政権下で発生した新ポピュリスト的な政策は、バイデン政権においてフルに反映されている。それはクリントン氏からオバマ氏まで共通していたネオリベラル的な主義と鋭く断絶していると言える。

 トランプ氏は政権をポピュリスト的に運営すると同時に、少数のエリート政的に運営した。法人税率を引き下げ、労働の力を弱めた。

 https://www.project-syndicate.org/commentary/biden-trump-neopopulist-economic-doctrine-by-nouriel-roubini-2021-08