英字紙ウォッチング

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サウジアラビアの新戦略

 米国の助けがもはや期待できない中、サウジアラビアは新たな戦略に打って出ようとしている。それは、「話し合い」である。

 米国の貿易にもはや依存できないのではないか、という不安とともに、サウジは敵である国と話し合いを始めようとしている。狙いは中東地域の紛争鎮静化である。

 イランにより、ミサイルやドローン攻撃を幅広く受けてから数カ月が経過した。サウジの皇太子は緊張を緩和するために、これまでにない外交戦略の転換を図ろうとしている。

 ムハマド・ビン・サルマン皇太子は、イエメンで4年間にわたって戦ってきた抵抗勢力と直接対話に踏み切った。富裕な隣国であるカタールとは、同国に課してきた障壁を緩和する姿勢を見せている。イランとも直接対話を模索している。

 対決から交渉へ、このサウジの姿勢を変化させているものは、数十年にわたってサウジの政策の要石であったアメリカの中東政策の変化があるからだ。アメリカは外国の攻撃からサウジの石油産業を防衛するだろう、という理解がもはや当然のものと言えなくなっているのだ。

 アメリカの生ぬるい反応により、サウジを、数百億ドルをアメリカの兵器購入に費やしても、もはやアメリカを頼ることができないという認識に至らせている。タフで、予想できない敵と戦うよりも、紛争を鎮静化させる方向へ冷静に向かおうとしているのだ。

 9月14日の攻撃は、湾岸の歴史において非常に重要な瞬間であった、という評価が出ている。

 アメリカにとって、中東における外交戦略の転換は恐るべきパラドクスに満ちている。トランプ政権と議会は、サウジに対し、イエメンとの戦争を終結させるよう圧力をかけている。同時にトランプ政権はカタールと妥協するよう圧力もかけている。しかし、イランの攻撃は、こうしたアメリカの圧力よりもサウジの姿勢を変えさせることに役立った。

 ムハマド皇太子は2015年以降、サウジの外交戦略をよりアグレッシブな方向に変えてきた。イエメンと戦い、カタールでは懲罰的なボイコットをし、イランとはテロリズムを支援していると糾弾してきた。

 批判をする人は、若きプリンスは厚かましく、強情であり、中東地域を不安定化させる要素であるとしてきた。イエメンとカタールでは望む結果を得ることができなかった。イエメンでは前例のない人道危機をもたらした。

 https://www.nytimes.com/2019/12/26/world/middleeast/saudi-iran-qatar-talks.html