英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

「マイナス金利」というモンスター

 曇り。

 2019年のマーケットイベントの振り返り。

 年初の円高に始まり、今年もいろんなことがあった。

 2019年は後世、中央銀行が報いを受けた年であると記憶されることになるだろう。政策当局者によって供給されたチープマネーの奔流は、債券市場をより高い水準に持ち上げ、金融システムのあらゆるところにマイナス金利をいきわたらせ、多くの中央銀行家や銀行員、投資家らに対し、創り出したモンスターを制御できるのかどうか、自問させた。

 Fedが利下げに方向転換したことで、投資家が滑って転倒し、レポ市場の機能不全は多くの怒りを引き起こした。そして、トランプ大統領は即興の発言を次から次へと繰り出し、為替市場にショックをもたらした。

 2019年は1月2日、円の急上昇で始まった。1月2日にトレーダーたちが仕事に戻る直前、日本の円が突然、そしてはっきりとした理由もなしに3%もドルに対して上昇した。これはニューヨーク時間で午後5時から6時の間に起きる、「魔法の時間」の出来事だと説明した。その後、1年を通じてボラティリティが崩壊した。

 2018年の年末には、その年4回目の利上げを済ませ、今後も利上げを続けるとFedは語っていた。しかし、そのわずか6週間後、突然Fedは利上げを中止し、逆に利下げに転じることを示唆した。そして言葉通りに7月に最初の利下げに踏み切った。

 この1月のUターンは中央銀行の米国経済に対する評価が大きくシフトしたことを反映している。

 4月にはサウジアラムコによる、史上最大のIPO計画が明らかになった。4月はIPOの前のイベントとして、120億ドルもの債券売り出しが行われた。

 年央には為替戦争が勃発した。ECBが新たな金融緩和策を打ち出すと、トランプ大統領ツイッターで、米国にとって非常に不公平だ、とかみついた。

 8月には、中国人民銀行が2008年の金融危機以降としては初めて、1ドルに対し、人民元が7元を割ることを許容した。

 夏には17兆ドルもの債券がマイナス金利で取引された。伝統的な安全通貨とされる日本やドイツの国債だけでなく、マイナス金利の領域はギリシャの短期債や新興国債券にも広がった。

 9月に起きたのはウィーワークショックだ。同社のガバナンスや経営陣に対する疑念が膨らみ、上場計画を破棄するに至った。

 11月1日には、マリオ・ドラギ総裁が任期切れとなった。そして、後任にラガルド氏が就任した。退任前の数か月間、ドラギ氏は政府にもユーロ圏経済を刺激する同じ役割を担うよう、繰り返し語った。金融政策だけで雇用を創出できないとドラギ氏は遠慮呵責なく、述べたのだ。

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