サンフランシスコ連銀より。
経済が過熱すると、次第にインフレが加速していく。
この単純な知識はフィリップスカーブで表現される。しかし、先進国におけるインフレ率は2008年の世界金融危機以降、非常に弱弱しい状態が続いている。失業率は歴史的な低水準に近づいているにも関わらずだ。
このインフレと失業率の相関関係が最近薄れてきている背景には何があるのか。先進国と新興国について、危機前後の経験を比較することで、金融政策よりも幅広い要素が影響していることを以下に示したい。
インフレ率は世界的に低迷し、これは金融危機に先立って起きていたトレンドである。
世界経済は金融危機から立ち直り、失業率は4%を切っている。労働市場はタイトになり、財やサービスに対する需要は上昇している。この需要を満たすために、普通、企業は価格を引き上げる。
これがフィリップスカーブとして知られるメカニズムである。
しかし、金融危機後の10年間は、この関係が崩れていた。多くの研究者がフィリップスカーブについて、もはや有効なインフレの動学を示すものではないと論じている。
金融危機後に、このフィリップスカーブの長期的関係が変化したのだろうか。フィリップスカーブを構成する3要素を分析してみた。
結論からいうと、先進国においてフィリップスカーブが死んだというには、まだ時期尚早である。フィリップスカーブはまだ機能しているのだ。先進国においては中央銀行が経済のスラックをならすことに成功しており、それがフィリップスカーブの関係が薄れているように見せている。
一方、新興国の中央銀行は制約のもとで金融政策を進めており、そのことがフィリップスカーブがより成立しているように見せている。
世界的に過去20年間、インフレの下方圧力が生じており、それは金融政策がよりよく運営されている結果だけとは言えない。
フィリップスカーブは3つの構成要素によって機能するとみなす。一つはディマンドプル要素で、労働市場におけるスラックを意味する。具体的には失業率と自然失業率のギャップを使う。
2番目は過去のインフレ率だ。3番目は将来のインフレ期待である。