英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

イラク侵攻から15年

 米軍によるイラク侵攻から15年が経過した。イラクは少しずつ復興の道のりを歩み始めている。イスラム国が倒され、新しい意味での国家統合が始まった。しかし、それは非常に脆弱である。
 イラクでもっとも大きい都市のひとつ、モスルのテーブルにウイスキーが戻ってきた。大酒を食らうことは昨年までは80回のむち打ち刑で罰するべきことだった。
 モスルの大学周辺の廃墟には商店が復活した。チグリス川の川辺のレストランで家族連れが列に並んでいた。
 モスルの復活はイラク全体の復活の隠喩でもある。イスラム国が2014年にモスルを占領したとき、イラクも失敗に終わった国と思われた。イラクの軍隊は離散した。政府が支配する地域はかつての半分に満たず、ジハード主義者らが首都バクダッドに向けて行進を続けていた。原油価格が大きく下落し、政府は崩壊した。
 しかし今や4000万人の住民とともに、イラクは平常に戻っている。イラク軍は国境の支配力を取り戻した。バクダッドは他の中東諸国の首都と比べて平和な年である。政府は原油価格が2倍に上昇し、お金をたっぷり持っている。クウェートで今年初めに開かれたイラク復興会議で、2000人の海外投資家がホテルに集まったのも不思議ではない。
 近隣諸国と数多くの紛争を戦ってきた過去のイラクの歴史からすると驚くべきことだが、イラクは今やすべての近隣諸国と友好関係を築いている。米国とイランはほろ苦い敵対国であったが、今や両国ともイラクの軍隊や政治を支援している。湾岸諸国とは、数十年にわたる対立を踏まえ、外交関係を回復させた。
 イラクチュニジアを除くと、アラブ諸国の中で、独裁者を取り除き、民主主義を維持しているまれにみる国であるのだ。2003年以降、4回の複数政党による選挙を経た。次の選挙は5月12日である。独裁国家ばかりの中東地域において、イラクでは言論が自由であり、メディアや市民団体が元気に活躍している。
 https://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21739759-islamic-state-defeated-new-sense-unity-prevails-it