英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

より良い死のために

 エコノミスト最新号のトップ記事は、死について。非常に重要なテーマである。
 17世紀のロンドン市民にとって、死は突然やってくるもので、恐ろしいものだった。もちろん、それは現代でも同じだ。20世紀になるまで、人間の平均的な寿命はチンパンジーとほぼ同じだった。
 しかし、今日の科学と経済成長のおかげで、人間ほど長寿の哺乳類はいなくなった。
 いかに、いつ、どこで死ぬかが、過去100年間で大きく変わった。1990年代後半までに、世界中の死因の半分は慢性疾患により引き起こされるようになった。2015年にその割合は3分の2に達した。豊かな国では、3分の2が病院か介護施設で亡くなる。しかも、必死の治療の組み合わせの後、亡くなる。
 65歳以降に亡くなる米国人のおよそ3分の1は、最後の3ヶ月間を集中治療施設で過ごす。しかも、そのような熱心な介入は苦痛に満ちたモノになりうる。病院で亡くなるがん患者は典型的には、家で亡くなる人よりも苦痛やストレス、うつ状態を経験する。
 もっとも重要なことは、こうした医療漬けの死亡は、人々が望んでいることではないように見えることだ。主要4カ国の世論調査によると、健康な人々は、将来死に至る際に自宅で死にたいと願っている。そして、最優先すべきはできるだけ長く生きると答えた人々は少ない。むしろ、彼らは苦痛から自由のまま死にたいと願っている。
 人々が良くいうのは、死が近づくと、彼らが従前に望んでいたことが変わるということだ。それゆえに、いわゆるリビングウィルなるものに、医師たちが懐疑的なのだ。
 米国では末期ガン患者の3分の1は、人生の最後の目標について尋ねられる。たとえば、スペシャルイベントに参加したいのか、孫の結婚式に出たいのか、などだ。それが死を早めるリスクを犯すことになってもだ。
 http://www.economist.com/news/leaders/21721371-death-inevitable-bad-death-not-how-have-better-death