英字紙ウォッチング

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メキシコ大統領の悪夢

 メキシコ大統領にしてみれば、悪夢以外の何者でもなかろう。
 エンリケ・ペニャニエト大統領はトランプ氏によって厳しいスポットライトを浴びている。メキシコ国民としてのプライドと、米国との貿易という死活的利益の狭間で苦しんでいる。
 トランプ氏が大統領に就任すると、壁の建設とNAFTAの再交渉を本気で模索している。しかし、メキシコ大統領の選択は決して簡単ではない。ピニャニエト大統領は、米国に対して怒っている人々と、なんとしてもNAFTAを維持すべきだと恐れている人々との間で板挟みになっている。
 金曜日には、2カ国の大統領が1時間に及ぶ電話協議を行った。狙いは敵対的な応酬が二カ国の間で繰り広げられており、2カ国の絆を強化するためのものだ。
 2カ国とも金曜日の電話協議は生産的で、暖かなものだったと表現している。しかし、明らかに将来の火種が残っている。
 メキシコ大統領府の報道オフィスは、両国の大統領とも、メキシコが壁の費用を支払うべきだというトランプ氏の主張について、はっきりとした、そして、非常に公的な違いがあったことを認識している。
 もし、米国がNAFTAから脱退すれば、輸出依存の経済であるメキシコにとって大きな打撃となる。
 国境の壁に対し、費用を支払うことに合意すれば、メキシコにとって政治的な自殺を意味する。1846年からの米墨戦争で、メキシコは国土の半分以上を失った。
 メキシコの政党すべてと多くの重要なビジネスリーダーたちが大統領を支持している。
 メキシコでは、ガソリン価格が上昇し、新年入りすると、暴力を伴う抗議の波が襲った。ピニャニエト大統領の支持率は1月中旬時点でわずかに12%しかない。これは過去の大統領としては最低水準だ。しかし、米国訪問をキャンセルしたことで、支持率が上向くとみられている。
 http://www.wsj.com/articles/enrique-pena-nieto-put-in-tough-spot-by-donald-trump-1485556405