英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

Simsペーパー

 Sims教授のジャクソンホールにおけるペーパー。FTPL理論に基づく議論を展開している。
 このエッセイは、現在の政策イシューに関連したものだ。現在の環境下において、中央銀行の独立性とは何か、そして、いかにそれを維持しうるか。さらに、中央銀行のバランスシートが大きいことは、良いことなのか、そうでないのか。なぜ金融政策は目標としているレベルまで引き上げることができないのか。財政赤字は、効果のない金融政策にとって代わりうるのか。これらの問題は、すべて幅広く議論されてきた。
 FTPL、物価水準の財政理論がこうした議論にいくつかの光を当てることができる。
 この理論においては、合理的な行動主体が将来のイベントの可能性を正確に予測し、行動する経済を想定していた。そして、複数の式によるモデルで考えるので、学部学生に教えるのは高度すぎており、非現実的なモデルだとみられていた。
 しかし、この理論の基本的な洞察は合理的な行動主体に依存していない。政府紙幣の実質価値が増加すると、人々はより消費を増やし、将来の増税が予想されると、消費を減らすということのみだ。
 まず、結論から。
 中央銀行の独立性とは何か。中央銀行の独立性があるのは、金融政策と財政政策を切り離すためだ。しかし、これは完全に分離しているのではない。なぜなら、すべての金融政策のアクションは、財政的な結果を招くからだ。急激なインフレ、あるいは逆に低インフレが続く際、財政政策と金融政策の協調は不可欠だ。
 2つめに、中央銀行のバランスシートを大規模なままにしておくことは、良いことなのか。端的な答えはノーである。
 規模の大きなバランスシートは、金利が上昇する際の負債の問題と、資産と負債のミスマッチの問題が生じる。この結果、市場価値がマイナスになる可能性もある。そして、このことは政治的な介入と中央銀行の独立性を脅かす。
 では、なぜ、金融政策は日米欧において、目標を達成できないのか。一つの回答は、金利はゼロ近くまで相当長い期間低迷しているからだ。それゆえ標準的な金融政策は厳しく制約されている。
 金融政策の効果がないときに、財政赤字はとって代わることができるのか。財政拡張は、財政赤字とは異なる。財政赤字は、将来の増税や歳出削減ではなく、将来のインフレでファイナンスされたものと受け止められなければならない。
 多くの富裕経済国において、政府の利子付き負債は、現金通貨よりも多く発行されている。政府の利子付き国債のないシンプルなモデルにおいては、物価水準はマネーの量でコントロールされると考えられる。人々は、利子がないゆえ、現金を取引を促進する価値にのみ基づいて保有する。中央銀行はマネーの実質価値をコントロールすることはできない。
 https://www.kansascityfed.org/~/media/files/publicat/sympos/2016/econsymposium-sims-paper.pdf?la=en