英字紙ウォッチング

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BS縮小の政治経済学

 Fedがとうとう長期停滞論を受け入れたのだという。
 9月20日FOMCについて、金利の現状維持とバランスシート縮小を打ち出したことは予想の範囲内の出来事だった。しかし、予想されていなかったのは、長期の金利見通しを下方修正したことである。Fedは明らかに下記のリサーチに基づく考え方を支持している。
 つまり、生産性の低下と労働力人口の減少が、経済の潜在成長力を押し下げてしまっている、という指摘である。
 今回FOMCは中立金利を2・75パーセントまで引き下げた。現在、FF金利は1・25パーセントなので、利上げサイクルはすでに半ばまで到達したことになる。
 バランスシート縮小策は、来月からスタートし、まずは月間100億ドルの有価証券を再投資しない。
 https://piie.com/blogs/realtime-economic-issues-watch/fed-buys-secular-stagnation
 リサーチはこちら。2015年11月に作成されたペーパーで、自然利子率の低迷を計測する、とある。金融危機が始まって以降、推計されている自然利子率は非常に急速に落ち込み、回復の兆しは見えない。もし自然利子率が低いままとどまれば、早晩ゼロ金利政策に直面することは明らかである。
 https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2016/07/WP15-Laubach-Williams-natural-interest-rate-redux.pdf
 バランスシート縮小策をめぐり、議論が活発化しており、これもその一つ。
 Fedの職員は非常に職務に忠実に働いているが、それだけをみるのではナイーブすぎる味方である。ほとんどの人々と同様に、彼ら自身の幸福を考えて物事を決定している。
 バランスシートの縮小策が始まることになったが、これを素材に考えてみよう。
 今回のFedの決定にあたっては、2つの政治経済的な力が働いた。一つは、Fedとしては、バランスシートをできるだけ大きく保っておきたい力学だ。
 2008年以降、バランスシートを拡大させるとともに、超過準備に利子を付与した。現在、Fedの利益は年間1000億ドルに及ぶ。それゆえ、予算をできるだけ大きく保っておきたいという組織上のインセンティブが働く。Fedが良い規制当局かどうかともかく、予算を拡大させる誘惑があるのだ。
 一方、バランスシートを縮小させたいという誘引もある。資産は負債とともに拡大した。増加した負債の大半は、銀行の超過準備からなる。この超過準備は外国銀行と米国の大手銀行が保有するものが大半だ。このことは、外国人と危機に際して救済された米国銀行がFedから利子を受け取っていることを意味している。もし、バランスシートを大きく保ったまま、短期金利を徐々に3パーセントに向けて引き上げていけば、これらの銀行はおよそ年間に660億ドルの利子を受け取ることになる。この議論を避けるために、早めにバランスシートを縮小する必要があるというのだ。
 http://macromarketmusings.blogspot.jp/2017/09/the-political-economy-of-shrinking-feds.html