英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

貧困救済という偽善

 ニューヨークタイムズ紙の記事などに触発されて、こんなブログ記事も登場している。
 筆者は、最近米国南部を旅して、大きな衝撃を受けた。その貧困の深さについてだ。アジアに輸出拠点が移り、中国から大量の安い商品が輸入されるようになった。その結果、米国内での職が失われ、深刻な貧困が南部アメリカを襲っている。
 それなのに、米国の政治的、経済的エリートたちは足元の現実に目を向けようとしていない。ミシシッピ州やアーカンザス州の貧困の現実に目を向けず、クリントン財団などの慈善活動家は、アフリカの貧困活動を誇っている。
  http://economistsview.typepad.com/economistsview/2015/10/those-who-are-left-out-in-the-cold.html
 これがニューヨークタイムズの記事である。タイトルは「貧者救済という偽善」。
 冒頭から痛烈である。多くのお金持ちは、アフリカや米国の貧困のために寄付していると自慢している。しかし、彼らが富を築いたのは、中国やインド、ベトナムやメキシコなどに工場を移転し、多くのアメリカ社会を貧しくすることによってではないか。
 筆者が「Deep South」と呼ばれる南部地方を訪れると、そこには閉鎖された工場や町並みがあちこちでみられたという。そこにはほとんど職はない。これは米国外に仕事をアウトソーシングしてきた歴史であり、その結果が南部アメリカに深刻な影響をもたらしてきたことを示している。
 筆者は書く。彼が歩いて回ったサウスカロライナアラバマ、、ミシシッピやアーカンザス州の町並みは、ジンバブエの町並みにそっくりだ、と。人々から忘れ去られ、問題が山積みの街である。
 これがグローバリゼーションの帰結だ。筆者からみると、グローバリゼーションとは、新たな工場、安い労働力を探して回る動きに過ぎない。グローバリゼーションはアウトソーシングを意味している。それは、米国のコミュニティを貧困化させ、米国社会を第三世界の汚い街と変わらないようにさせてしまう。
 こんな貧困が現代の米国で起きていることなど、信じられない。
 アップルのクックCEOは、その富を寄付するとして高く賞賛されている。しかし、私には、称賛できない。
 http://www.nytimes.com/2015/10/04/opinion/sunday/the-hypocrisy-of-helping-the-poor.html?_r=0
 これもニューヨークタイムズの力のこもった記事。
 「ジョージ・ベルの孤独な死」。
 http://www.nytimes.com/2015/10/18/nyregion/dying-alone-in-new-york-city.html?hp&action=click&pgtype=Homepage&module=b-lede-package-region®ion=top-news&WT.nav=top-news