英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

ユーロにかかる雲

 お盆に近づいてきて、涼しくなってきた。早くも(?)帰省からの戻りラッシュなのだそうだ。世の中の感覚からズレているのかしらん。

 昨日のユーロ圏統計の話。
 http://www.ft.com/cms/s/0/261e3018-a6fa-11df-90e5-00144feabdc0.html
 ユーロゾーンにかかっていた雲が晴れつつあるように見える。ドイツの第2四半期のGDP成長率は年率換算で9.1%相当だったが、ギリシャやスペイン、イタリアの実績とは対照的だった。しかも、第2四半期の好調な実績は一時的な要因が多く、今下期も続くとは考えにくい。
 ドイツの実績が好調なのは、ユーロ安で輸出が好調だったせいだ。景気刺激策を打つ局面は去り、いまは財政緊縮に向かっている。ドイツが2.2%、フランスが市場予想を上回る0.6%成長だったのに対し、イタリアは0.4%、スペインとポルトガルは0.2%の成長。そして、ギリシャは1.5%下落した。ギリシャは7四半期連続のGDP成長率のマイナスだ。ちなみに米国は0.6%、英国は1.1%成長。
 それほど楽観する状況にない、という記事のトーン。

 ユーロの機関車であるドイツが煙を吐きながら進んでいる比ゆ(Euro's locomotive is puffing again)。
 http://www.ft.com/cms/s/0/7e7a5a54-a70c-11df-90e5-00144feabdc0.html 
 ドイツの実績は、輸出主導の回復といいつつも、企業の設備投資や消費も好調だった。
 問題は輸出の中身。ドイツの輸出は他のユーロ圏向けが中心。批判を意識して、ドイツはアジア新興国向け輸出を増やそうとしている。その結果、他のユーロ圏向け貿易黒字は縮小しつつある。ユーロ圏向け輸出が減少し、国内刺激策をとっていることが、他のユーロ諸国がドイツを信認する理由になっている。
 しかし、ユーロ周縁国にとっては、わずかな慰めにしかならない。ギリシャは沈みつつあり、スペインやポルトガルも沈む寸前だ。
 ドイツの年率にして9%成長というのも、先進国ではそうそうある話ではない。中国や米国の減速は、輸出業者に冷や水を浴びせかけるようなものだ。

 マネーサプライより。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/08/13/banks-exposure-to-italy-dwarfs-risk-from-pigs/
 一時休戦状態で関心が急速に低下していたスペインやアイルランドギリシャの問題が再浮上してきた感がある。3カ国のイールドが上昇し、スペインの銀行が1400億ユーロの資金を打診した、とのニュースが流れてきた。ユーロ危機第二幕、と言ったところだろうか。
 特に関心を呼んだのは、イタリア債券への需要が急速に落ちている点。欧州の銀行はイタリア国債へのエクスポージャーが大きく、上位91銀行は1000億ユーロのイタリア国債をトレーディング勘定で保有している。これはスペインの4倍、アイルランドの22倍の規模だ。ドイツ国債でも700億ユーロに過ぎず、これは欧州最大規模。
 
 次は米国の失業率が予想より高止まりしている点について。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/08/13/the-trouble-with-forecasts/
 添付されているチャートをみると、計画より2%ポイントほど実際の失業率は高い。二番底かどうかは別として、われわれは経済の減速の只中にいる。

 RBSのアイルランド向けエクスポージャーが最大だという話題。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/08/13/rbs-has-biggest-trading-exposure-to-irish-debt/
 アイルランド国債の価格が下がり、フランスや英国の銀行がロスを抱えている。ECBとアイルランド中銀が国債買い取りに出るという噂も出ているようだ。
 ストレステストの成果と言えるのだろうが、保有が最大なのはRBSで、11億ユーロをトレーディング勘定で持っている。次いでクレディ・アグリコール、HSBC。満期保有の分も加算すると、ドイツのHypo Real Estateが最大で、100億ユーロを銀行勘定で持っている。
 
 FTアルファヴィルより。
 http://ftalphaville.ft.com/blog/2010/08/13/315266/how-to-say-%e2%80%98appropriate-action-in-japanese/
 円高で臨時会見した財務相発言について。”appropriate”の訳の問題なのだろうか。「景気動向を見守りながら、適切な対応をしていきたい」といった発言の、「適切」の訳なのだろうが・・・。
 
 ブログCalculated Riskより、二番底についての論争が起きていることについて。
 http://www.calculatedriskblog.com/2010/08/double-dip-debate.html
 エコノミストのローゼンバーグ氏は、二番底の可能性はフィフティ・フィフティと述べているのに対し、GSのエコノミストは否定的。25から30%の確率はあるが、ベースシナリオではないと述べている。その理由は、民間部門の活動が歴史的に低水準にきているから。住宅投資の減少と貯蓄率の上昇だ。
 もし失業率が再上昇し、住宅価格が下がり始めたら、二番底懸念が一気に浮上する。