英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

トルコ・リラ急落

 晴れ。猛暑が戻ってきた。
 一見絶好調にみえるが、少しずつ、世界経済の雲行きが怪しくなってきた。
 米国との口げんかがますます激しくなる中、トルコ危機が世界のマーケットを揺さぶっている。通貨リラは14パーセント近く下落した。トルコの外貨建て債務が返済されるのか、世界のマーケットは関心を寄せている。
 アンカラ政府の安定性への懸念を増幅させるような、通貨リラの急落が起きた。欧州や新興国市場に衝撃をもたらしている。
 リラはドルに対し、最大で17パーセント下落した。今年世界の市場においてもっとも激しく下落した通貨となった。
 エルドガン大統領は金曜日、2つの演説を行い、自身のオーソドックスでない政策を正当化した。経済戦争と呼ぶ事態についてである。トランプ大統領はトルコに対し、アルミニウムと鉄鋼の関税を二倍にした。
 一方、米国はトルコで拘束されている米国人牧師の解放をここ数か月求めている。トランプ大統領ツイッターで、トルコとの関係は今は良くない、とつぶやいた。
 リラ急落を受け、ダウ株価指数は196ポイント下落した。3日間連続の下落である。欧州ではトルコ通貨の下落がスペインやイタリア、フランスの銀行株を直撃した。トルコ向け融資額が大きいからだ。
 エルドガン大統領は6月の総選挙で、憲法改正によってトルコ経済の回復に導くと約束したが、今回のリラ急落はそうした約束とは程遠い現実が浮き彫りになった。トランプ氏とエルドガン大統領の難しい関係は、経済の脆弱性をさらすことになった。
 先月16パーセントに達したインフレ率がますます加速するにも関わらず、トルコの中央銀行は選挙後も金利を据え置いている。中央銀行は必要とされる独立性を持っていないのではないか、と投資家は見つめている。
 トルコの対外債務は新興国の中でもっとも大きい。そして、外貨準備高はもっとも小さい。そうした中、通貨リラが急落することは、トルコの企業だけでなく、金融システムも危機にさらすことになる。実態経済を守る手段を探すことが緊急に求められている、という指摘もある。
 トルコ国債の利回りは金曜日に20パーセントを超えた。2008年以降でもっとも高い水準であり、今年5月初めにはおよそ12パーセントだった。
 トルコができることは限られており、資本規制かIMFのような外部機関に救済を求めるかしかない。しかし、トルコ政府はIMF支援を求める考えはない、としている。
 https://www.wsj.com/articles/turkish-crisis-rattles-currency-markets-dollar-hits-one-year-high-1533883798?mod=hp_lead_pos1
 欧州の銀行がトルコ向けにどれだけ融資を抱えているか。ECBが関心を寄せている。BBVAやウニクレディト、BNPパリバなどが多い。
 ECBは今のところ、事態は危機的な状況であるとは見ていない。しかし、トルコで大きな営業体制をとっているスペインのBBVAなどについて、注視をしている。
 ECBは、トルコの借り手企業などがリラの弱さについてヘッジをしていないリスクを懸念している。そして、外貨建て融資が焦げ付き始めるかもしれない。
 欧州マーケットは金曜日、こうしたプレッシャーの中、場をあけた。ユーロの銀行株指数は0・5%低下した。
 トルコ政府当局は健全だと言っている。トルコの不良債権比率は3%だという。しかし、ムーディーズは最近、経済的な圧力が強まると、この不良債権比率が上昇すると警告している。トルコの銀行システム内部にはまだ隠された問題が数多く存在するとの指摘もある。
 https://www.ft.com/content/51311230-9be7-11e8-9702-5946bae86e6d