英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

アメリカ第一のコスト

 エコノミストより。米国ファーストのコストが上昇しているという。トランプ氏はトランプ流の外交政策を追い求めているが、そのことによる代価を支払う意思はない。
 シンガポール宣言の署名のインクが乾ききっていないのに、なぜこれまでの核合意よりも良い条件を受けるに足る国であるといえるのか、トランプ大統領は問われている。彼自身の説明によれば、その違いは彼自身にあるのだという。トランプ氏の外交政策をつなぐ唯一の原則は、個人的な利益に対する容赦のない目である。
 北朝鮮政策をより広くみると、それは鮮明である。北朝鮮に対しては長らく、キム・ジョンウン氏の体制が核兵器をあきらめるべきだという米国の要求は凍結されていた。しかし、米国大統領としては物事を揺さぶる2つの道があった。キム・ジョンウン氏に通常の関係を求めるか、戦争になると脅すか、である。大半の北朝鮮ウォッチャーは、最初の道は考えにくく、二番目の道も現実的ではないとみていた。しかし、トランプ氏は両方の道を狙ったのだ。
 緊張緩和を約束することのメリットが何であれ、その戦術は、大統領にとってかしこくも引き合うものであった。歴史的な進展があったかのような見せかけを作り出すことができる。そして、それが彼がノーベル平和賞を受賞するのではないかという予想屋の掛け率を引き上げることにつながる。
 そして、もし取引の成果がなければ、彼は非常プランを持ち出すだろう。
 トランプ氏がこれまで打ち出しているほとんどすべての破壊的ともいえる外交政策は、彼自身の自画像を決定力のあるリーダーに例えようとするものだ。しかし、この戦略の見返りは徐々に減少しつつある。オバマ前大統領のレガシー、すなわちTPPやパリ協定、イランとの核合意などから抜け出ることで、それを覆い隠すことは朝飯前だった。こうした手続きは、党派色の強い共和党議員の一部の喝采を浴びたが、米国が受けることになるコストは、すぐに影響が出ないものであり、測定が不可能だ。西側諸国のリーダーたちは、米国に議論をし返すことに躊躇している。それはトランプ大統領がポイントであるからだ。外交関係における息苦しいようなエチケットは、彼のスタンドプレーによって目覚ましい効果をあげている。しかし、こうしたことを続けることで、安いコストで取引をする機会を徐々に失いつつある。
 彼にはオバマ前大統領の外交政策の達成を手じまいする余地はもうない。彼が標的とする次の国際的な団体としては、NAFTANATO、そして国連くらいしか残っていない。もしこれらから脱退すれば、政治的にもそれ以外の面でも非常に大きなダメージを受けるだろう。
 https://www.economist.com/united-states/2018/06/16/the-rising-cost-of-america-first