英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

ヘリマネが経済を救う

 日本の消費税率引き上げについて。増税による消費へのマイナス影響は、実際に引き上げられたときよりも、その引き上げが宣言されたときに大きく現れる、と論じている。
 消費増税は日本の財政再建を進めていくうえで、決定的な要素だと受け止められている。しかし、日本政府は増税が家計の消費を減らす悪影響のほうに関心を持っているようにみえる。
 http://voxeu.org/article/japan-s-next-vat-rate-increase
 ヘリコプターマネーが経済を救う。
 われわれが大規模な失業に直面したとき、たとえば、リセッションや海外に職が移ったり、あるいは自動化されることで職が奪われることなどを考えてみればいい。それは実際の経済が潜在的な経済よりも低いレベルで活動しているからだ。潜在的な経済が意味しているのは、2〜3パーセント程度のインフレ率で、高い水準の生産と雇用の創出を果たすことのできる状態だ。
 経済が潜在的な水準に達していないとき、人々が職を見つけることは難しい。しかし、1990年代のように、経済がブーム状態にあると、人々は職を簡単に見つけることができる。
 この潜在的な経済の力を増す要素はいくつか存在する。より良い教育と健康、一層の資本投資、規制緩和などだ。しかし、グローバルな経済を刺激するのに、ますます多くのエコノミストが論じているのはミルトン・フリードマンが提案したアプローチだ。
 それは、潜在成長率を下回った経済において、半ば冗談のように、支出を増やすには、中央銀行が新たな紙幣をプリントし、ヘリコプターから人々に投げ落とせばいい、と述べたのだ。新たな紙幣を使う人々は経済を刺激し、すべての人が職に戻れるだろう。
 それ以来、このアプローチはヘリコプターマネーと呼ばれるようになった。そして、今、世界中の人々が真剣に考えている。
 この論者は、ヘリマネを使えば、政府はそれを使って道路や橋に支出できるし、人々に税控除という形で戻すことができると論じている。そして、ここが大事なところだが、そういうことをしても、経済が刺激され、国家の債務が増えることはないという。なぜなら政府はお金を誰からも借りたことにならないからだ、と。
 http://www.abqjournal.com/791892/helicopter-money-can-help-economy.html
 4月のエコノミスト誌より。「天国からのお金」。
 経済をスランプ状態から救いだすために、世界の中央銀行はキャッシュを人々に手渡すことを検討している。
 ヘリコプターマネーはヘッジファンドにしてみると、お金のかかる主張のひとつに聞こえる。実際は、金融政策に対する斬新なアプローチのことだ。いくつかの中央銀行家は、このアイデアを検討し始めた。
 3月に、マリオ・ドラギ総裁はヘリコプターマネーを非常に興味深いコンセプトだと表現した。熱心な支持者は、スランプ状態の経済を救い出す絶対確実な方法だとみなしている。
 しかし、ヘリマネはその響きほど、ラディカルなものではない。さらに言えば、政治的な制約を取り払うことに失敗するかもしれない。
 ヘリマネのコンセプトは、ミルトン・フリードマンからやってきた。マネタリズムの父である。彼は1969年に、中央銀行英は経済を活性化させることに失敗することはないと考えた。新たにプリントした紙幣を空からまけばいいのだ、と。
 このアイデアは2000年代はじめによみがえった。バーナンキ議長が日本経済をデフレのワナから救いだすために、何が必要か論じたときのことだ。フリードマンのコンセプトに触れて、ヘリコプター・ベンと呼ばれた。
 だが、日本をもはや笑うことはできない。世界の富裕で大きな国々は日本のように低インフレと低金利に悩まされているからだ。とくに、日本と欧州はヘリマネを一服服用するトップ候補だ。大規模な量的緩和やマイナス金利政策を実行しているのにも関わらず、経済の弱さは続いている。新たな戦略が本当に必要とされているようにみえる。
 ヘリマネの支持者は実際には空からお金をまくつもりはない。実際には、借り入れや増税ではなく、新たに刷ったお金でファイナンスし、財政刺激を行うことを狙っている。満期まで購入した国債保有し続けることを中央銀行が約束する限り、量的緩和もヘリマネの一種だといえる。しかし、よりあからさまなヘリマネの形態といえば、新たに刷ったお金を直接市民に配るものだ。これを「人民QE」と言う。
 ヘリマネの利点ははっきりしている。金利を上げ下げするのと違い、刺激策は借り入れ機能に依存しない。この政策は中央銀行が新たなバブルをつくるリスクも減らす。
 借り入れによって財政刺激を行う場合も同様のメリットは得られるが、その場合は、消費者が将来積みあがった債務を返済するために増税があると思えば、効果は減殺される。
 何人からのエコノミストはヘリマネを推奨している。過去の世界大戦時、とくに米国と英国が熱心だったのだが、危機時に中央銀行ファイナンスの支出を実施したことがある。いくつかのケースでは結局ハイパーインフレーションを引き起こした。
 ヘリマネの本当の問題は、政治的な問題だ。欧州中央銀行がQEのような政策発動に遅れたのは、欧州法が中央銀行が政府をファイナンスすることを禁じていたからだ。
 http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21697227-get-out-slump-worlds-central-banks-consider-handing-out-cash-money