英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

トランプ唯一の障害

 トランプ候補が、拷問に関しての態度を改めた。軍事関係者や法曹の専門家から批判を受けた結果だ。
 金曜日に、トランプ氏は、米国軍に国際法を破るような命令は出さないと述べた。
 これまで、テロリストの家族を拷問にかけたり殺したりすると述べていたが、これはジュネーブ条約に違反することになる。
 共和党の大統領候補選びは、トランプ氏が潜在的に大統領候補に選ばれる可能性が出てきたことで、より良いポジションをとろうというもので、新しい局面に移った。
 木曜日の討論会では、ルビオ、クルーズ両候補から厳しい圧力を受けた。彼らはトランプ氏に対し、より詳細な政策を出すよう述べた。彼は、テロの容疑者について、厳しい取調べをすべきだと考えている。ただし、国際法などを破ってまで、そういう取調べはしないとWSJのインタビューで述べた。
 さらに、軍人に対して法律に従うなと命じることはないと付け加えた。大統領として、すべてのアメリカ人と同じように法律にしばられるし、そうした責任を果たすだろう、と述べた。
 これは木曜日夜にデトロイトで行われた討論で述べたことの撤回だ。
 http://www.wsj.com/articles/trump-reverses-his-stance-on-torture-1457116559
 エコノミスト誌より。「戦闘ライン」というタイトルで、クリントン氏とトランプ氏の争いを論じている。
 エコノミスト誌によれば、民主党の大統領候補はおそらくクリントンになるだろうという。そして、彼女に立ちはだかる、共和党のチケットを手に入れるのは、トランプ氏だろう。
 彼女らがスーパーチューズデー予備選挙後、判明した結果だ。多くの点で、これは陰鬱である。トランプ氏は、移民や女性、ムスリムに関してひどく不快な発言を行い、白人至上主義者を批判することを拒否している。しかし、11州で勝利を収めて以降、このセールス文句を易々と変えた。いろんなことに噛み付くのを止め、大統領らしくふるまおうと努力している。真摯であるふりをし、中道派に宗旨替えしようとする彼の能力を過小評価するのは賢いことではない。
 トランプ氏が大統領府に入る唯一の障害は、クリントン氏だろう。彼女は並外れた手腕を持ち、いくつかの点で驚異的な候補者であるが、欠陥がある。というのも、彼女は民主党内の基本的なところで支持を得られていない。そして、機密情報の扱いを誤ったとして調査を受けている。
 これほど多くの米国人が政治に絶望していることは、それほど驚くことではない。しかし、中には楽観主義に物事をみて、政治への信任を持ち続けている人もいる。今回の投票は2つの政党の再編につながりうるし、政治的な再編にもつながるだろう。
 今回、多くの米国人有権者が怒っていることが分かった。
 とくに、選挙ごとに投票者を変える浮動層が今回の選挙でも帰趨を決めることになる。それゆえ、怒りが増幅されそうだ。クリントンとトランプ両氏の選挙戦も醜く、広範囲なものになりそうだ。これはとくに共和党に当てはまる。
 怒りに突き動かされ、トランプ氏のリードで終始した選挙戦後、共和党自由貿易や力で押す外交を維持することはほとんどできなくなるだろう。そして、孤立主義と外国人嫌い、そして経済的なポピュリズムに走るだろう。そして、この変化を仮に生き残ったとしても、今世紀半ばに共和党は、非白人が多数派を占める国において、白人のナショナリストの政党としてあり続けるだろう。
 クリントン氏にとっても、怒りに焦点を当てることは民主党を解体することはないが、これではトランプ氏には勝てないだろう。
 http://www.economist.com/news/leaders/21693924-prospect-trump-v-clinton-grim-look-carefully-and-2016-offers-faint-promise