英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

米国経済3つのシナリオ

 2016年、米国経済で考えうる3つのシナリオ。利上げ後のシナリオでもある。いずれもゼロ金利からの脱却がいかに難しいかを示している。
 ここで引用されているのが、クルーグマン教授が日本経済について診断した有名な論文だ。いわゆる、無責任であることを責任を持って約束する、という政策だ。財政政策の大規模な発動を含め、金融政策をそのように発動しないと、流動性のワナ、デフレの悪い均衡から逃れることができない、と教授は説いた。
 金融危機からの脱却の過程で、もう一つのシナリオが浮上した。フリードマン・シュワルツ・バーナンキ仮説とでも言うべきストーリーだ。
 フリードマンとシュワルツは有名な著作で、1930年代の大不況は、Fedがマネーの供給を劇的に絞ったことが原因だ、と説いた。Fedの政策の失敗のせいで、不況が深く、長引くことになったのだ。
 バーナンキ前議長は2人の著作のフレームワークを借用し、今回の金融危機に当てはめて解釈した。流動性のワナが生じたのは、中央銀行の金融緩和が不十分であったからだ、と。十分なほど非伝統的金融政策を使えば、流動性のワナは克服できると説いたのだ。
 しかし、この見方は間違っているとこの記事の論者は説く。新たなシナリオとして妥当なのは、ハンセン・サマーズ流のセキュラー・スタグネーションシナリオなのだ、と。
 もしこの仮説が正しければ、現在のところ正しいことを証明しているように見えるが、大胆な中央銀行の施策はゼロ金利の問題を改善していてはいても、根本的に解決することはできない。
 貯蓄と投資の不均衡を是正するには、もっと大胆な改革が必要だろう。すなわち、人口が減少している豊かな国がもっと大胆に移民を受け入れること、さらに、政府による大規模な国債の発行である。
 セキュラー・スタグネーション仮説は陰鬱なシナリオである。もしかして、間違っているかもしれない。しかし、米国が再びゼロ金利に戻るようなことになれば、世界経済は今後10年間、不確実で、憂慮すべきものになるであろう。
 http://www.economist.com/blogs/freeexchange/2015/12/zero-one-then-back-zero