英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

ドイツ人のヒトラー観

 エコノミストより。
 戦後70年が経過し、ドイツ人のヒトラー観も変化している。
 ドイツにおいて著作権は70年で切れる。戦後70年が経過し、アドルフ・ヒトラーの「わが闘争」も例外ではない。1945年にバイエルン州がこの本の著作権を取得し、許可なしの再発行を禁じてきた。しかし、この1月からその許可が不要になる。ドイツ国内ではこのことが論争を引き起こしている。
 問題は簡単にわが闘争がコピーできるという表層的なことではない。現代のドイツにとってヒトラーが何を意味しているのか、という論争である。
 戦後、米国は非ナチ化を進めようとした。しかし、東西冷戦の激化に伴い、西ドイツを米国の同盟国とするため、多くの公職で元ナチ党員を採用せざるを得なかった。
 多くのドイツ人にとって、ナチスと戦後の記憶は忌まわしき記憶であり続けている。多くのドイツ人は依然としてホロコーストの全容を否定していた。1950年代の世論調査によると、多くの西ドイツ国民は当時、戦争を始めていなければ、ヒトラーは偉大な政治家の一人であっただろうと考えていた。
 そのトーンが変わったのは、1960年代に入ってからだ。アイヒマン裁判である。この裁判によって、ホロコーストの詳細が公衆の面前で明らかになった。1963年以降、22人の前SS隊員がアウシュビッツに関連する罪で訴追された。ドイツの多くの家庭では、息子娘世代と親世代とで深刻な亀裂が生じた。道徳的、心理的な危機にドイツ人全体が陥ったのだ。
 こうした事態を受け、2つの反応が現れた・・・。
 しかし、現代の若者にとって、わが闘争は退屈極まりない本だ。一方で、ヒトラーに関連した戦後のタブーも消滅しつつある。たとえば、ドイツ国旗を振ることもそうだ。転機となったのは、2006年のサッカーワールドカップ。これまで国旗を表立って振りかざすことに消極的だったドイツ人が、堂々と国旗を振った。
 今年の世論調査によると、ドイツ人がドイツらしいと感じるものや人として第一に挙げたのは、一番がフォルクスワーゲン(皮肉なことではある)。続いてゲーテメルケル首相。ヒトラーは7位につけている。
 こういう記事を読むにつけ、日本とドイツの道行きの違いを常々感じる。日本にはドイツのような歴史感覚どころか、歴史観そのものがないように思う。
 http://www.economist.com/news/christmas-specials/21683971-seventy-years-after-adolf-hitlers-death-how-germans-see-him-changing-what?spc=scode&spv=xm&ah=9d7f7ab945510a56fa6d37c30b6f1709