英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

人民元のトリレンマ

 中国政府が直面している、いわゆる国際金融のトリレンマについて。
 過去数年で明らかになってきたことは、中国政府が徐々に資本移動の自由化を進める中で、固定相場制を維持しながら金融政策の裁量を確保するのが、だんだん難しくなってきたことである。人民銀行は何度も流動性を供給しているが、効果をあげていない。中国国内で需要が落ち込むデフレ的な状況を鑑みれば、さらなる金利引き下げが必要だが、それは一層の資本流出人民元の減価を招きかねない。
 http://ftalphaville.ft.com/2015/08/28/2138825/chinas-ongoing-fx-trilemma-and-its-possible-consequences/
 中国人民元の切り下げはゲームチェンジとなるのか。
 1978年以降、中国は計画経済から市場中心経済へ大きな変革をゆっくりゆっくりと進めてきた。では、そういう大きな流れの中に位置づけた場合、過去数ヶ月の動きをどう評価すべきなのだろうか。それは、中国経済がグローバルな金融システムによりしっかりと組み込まれる一ステップと言えるかもしれない。そして、そのことにはいくつかの重要な意味合いがある。
 一番重要なインプリケーションのひとつは、金融資産の価格や量が、マーケットによって決定されることだ。しかし、過去数ヶ月の動きを振り返ると、中国の官僚たちはそのステップに踏み出すのを躊躇しているように見える。
 問題になるのは、現在行われている資本規制が、中国人民元の国際化と両立しないことだ。資本移動の自由化に伴うリスクを考えると、その動きはゆっくりしたものになると予想せざるを得ない。しかし、過去の前例のない発展ぶりを考えると、もしかすると、中国政府は一気に資本移動の自由化を進めるかもしれない。
 ここでもトリレンマが説明されている。すなわち、裁量的な金融政策と自由な資本移動、固定為替相場制の3つのうち、2つしか両立しないというテーゼである。あたかも物理的な法則であるかのように、確固たる法則だ。
 http://economistsview.typepad.com/economistsview/2015/08/is-chinas-devaluation-a-game-changer-if-you-cant-get-enough-on-china-heres-more-from-cecchetti-schoenholtz-is-chinas.html
 上記筆者たちの関連ブログ記事。
 国際的なリザーブ通貨になろうと考えている通貨にとって、通貨に対するレピュテーションコストはリザーブ通貨になることに伴う経済的なメリットを上回ることは避けがたい。究極的には、リザーブ通貨とは、経済的な危機時にあっても、流動性を供給できる保証を与えうる通貨のことだ。
 問題はIMFがなぜ中国人民元のレジームシフトを歓迎したか、である。
 http://www.moneyandbanking.com/commentary/2014/8/28/chinas-capital-controls-and-the-exchange-rate-regime