曇り。
強気市場が続いている。これがバブル相場に転換するのか否か。株価は上昇し、投資家は輝いている。しかし、同時に神経質になっている。
2年前、壮大なバブルがはじけたことに相当数の人々が同意していた。超低金利の時代が終わり、すべての資産クラスの基礎を揺るがした。株価は低迷し、政府国債は打撃を受けた。仮想通貨市場はフリーフォール状態に陥った。
インフレは終わり、安いマネーが調達できるという過去10年間のコンセンサスは、集団思考に陥った愚かなものだとみなされた。足元では懐疑主義と現金思考に主流の思考はとって代わっている。
アメリカ株にとっての谷は2022年10月に到来した。それから1年半が経過し、ほぼ世界中の株式市場が高値を更新した。とくに米国株の回復ぶりは著しい。エヌヴィディアの時価総額はわずか数か月で1兆ドルを超えた。3月にはビットコインの価格も記録を更新した。こうした現象は中央銀行による金利引き上げのさなかに起きた。これはバブルなのか。
多くの人々の頭に去来するのは、最近の強気市場ではなく、1990年代のそれである。当時はドットコムバブルが膨らんだ。現在も新たなテクノロジーが生産性や利益を大きく押し上げるという触れ込みになっている。
当時の典型例がシスコである。エヌヴィディアのように、シスコも新しいテクノロジー時代において不可欠のハードウェアを作る存在とみなされていた。
シスコはそれゆえに将来のバブルを象徴している。バブルは将来キャッシュフローを超えた経済条件で買うことにより生じる。その資産がいくらの価値を持つのかという問いは、窓の外に置かれている。問題とされるのは、将来いくらで売れるかのみである。つまり、人々がどれくらい熱中するかにかかっている。
しかし、いまそうした熱狂は存在しないかのようだ。ゴールドマンサックスの推計によると、S&P500の上位10株の企業価値は、将来収益の25倍が平均であるという。ドットコムバブルの当時、この倍率は43倍だった。
ユーフォリアも今は存在しない。