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フランス、燃え盛る暴動

 晴れ。

 フランスで暴動発生。マクロン大統領にとって、新たな政治的試練となる。警察官が10代の若者を撃ったことで怒りが広がり、マクロン大統領の反対者に攻撃の材料を与えることになっている。

 2期目を迎えるマクロン大統領にとって、もっとも厳しいチャレンジの1つとなりそうだ。フランス全土に暴動が広がり、それが4日目に入った。数万人の警察官が動員されているにも関わらず、政府は暴力を封じ込めることができないでいる。

 最初のきっかけは6月27日、交通警察官が10代の若者を射殺したことにある。若者はレンタカーを運転し、停止命令に従わなかった。マクロン大統領は3日間の予定でドイツを訪問する予定だったが、延期せざるを得なくなった。フランス大統領によるドイツ訪問は23年ぶりのことだった。暴動がマクロン大統領に政治的苦境を見せつけたことになる。

 中道派の少数与党政権であるマクロン政府は、極左と極右勢力の間で引き裂かれようとしている。マクロン氏は不人気の政策だった年金改革を政治的闘争の末に実行し、ようやく立ち上がろうとしていたところだった。

 極左側は、貧困者に対する暴動を批判する。これに対し、ルペン氏に代表される極右勢力は、マクロン氏のことを法と秩序、移民への対応が甘いと批判する。

 ただ、マクロン氏にとって路上の抗議は初めての経験ではない。2018年にイエロージャケット運動を経験している。抗議活動は武力を引き起こし、自動車が燃やされ、抗議の行進が起きた。

 しかし、今回の暴力は違った形で発生している。これまでの2回の抗議は直接、政府の政策に関連している。最初は炭素税と自動車燃料税だった。2回目は退職年齢である。しかし、今回はマクロン氏の言動や政策とは直接関係がない。そうではなく、警察活動の在り方や武器の使用方法に関することだ。

 人々が口々に私的するのは、2017年に決められた警官の武器使用ルールが緩くなっているというものだ。2022年には交通違反取り締まりの最中に13人が射殺された。しかも、取り締まりは何をしていたかではなく、何者であるかによって差別されている。

 とくに「banlieues」=郊外の公営住宅に住む貧困層に対する差別意識は厳しい。

 今回の暴動は公的サービスに対し、発生している。市役所や図書館、学校やバスなどだ。フランス政府はここ数年、多大な努力を使ってそうした隣人関係をリノベートしようとしてきた。2005年に暴動が広がったときは、夜間の戒厳令を発し、沈静化に3週間かかった。

 暴力の進行が長引けば長引くほど、利益を得る政治家は、というと、それはルペン氏である。

 https://www.economist.com/europe/2023/07/01/rioting-in-france-presents-a-fresh-political-test-for-emmanuel-macron