英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

Fedがマイナス金利に踏み込まない理由

 晴れ。

 久しぶりのGavyn Davies。なぜFedはマイナス金利を嫌うのか、という論考。

 まず、われわれは前例のない時代に生きている、という時代認識が示される。コロナウイルスによるパンデミックとその世界経済への影響は、米国の国債利回りの崩壊をもたらした。10年債、30年債の金利は、ともに今や1%を割り込んでいる。

 投資家は今や短期金利が今後数年でゼロに近づくとみているが、それは不思議なことではなくなっている。

 マーケットが我々に示しているのは、米国の連邦準備理事会が50ベーシスの利下げをし、数兆ドルの資金を金融システムに注入するという決断は、結局目的を達成することができなかったということだ。

 さらなる政策金利の引き下げは、経済を安定化させるのに十分ではないだろうし、インフレ率を2%に引き上げることもできないだろう。

 マーケットは低金利が長く続くという予想を、より低い金利がより長く続くと考え始めている。これは世界経済のイールドカーブによって決して良いことではない。

 このことはFedがマイナス金利をにらむべきかという疑問を投げかける。ECBや日銀はすでに政策金利をマイナス領域にしている。これにFedが加わると、現在の経済ショックは一時的なものであると信じ込ませることになるだろう。

 しかし、Fed自身はそうしたいと思っていないように見える。

 マイナス金利について、バーナンキ元議長はかつて、米国におけるマイナス金利はある一定の状況のもとにおいては有益である、と述べたことがある。しかし、今のところこの説明をパウウェル議長らは信じていないようだ。

 マイナス金利に踏み込まないのには、3つの理由がある。

 まず、マイナス金利に踏み込む法的な権限がFedにあるかどうかだ。2つ目の理由は、米国の金融システムにかかわる特別な特徴がマイナス金利を妨げているのだ。特にMMFの存在がある。残高は4兆ドルもあり、銀行の預金口座と同様の扱いを受けている。

 2008年当時を振り返ると、一つのMMFが崩壊したときに大混乱が起きたことが思い起こされる。仮にMMFでマイナス金利となると、マーケットにストレスをかけ、大混乱を引き起こす恐れがある。

 3番目の理由が最も重要で、それは日本や欧州におけるマイナス金利の経験が経済活動や信任に対する顕著な効果をもたらした証拠がないことだ。むしろ、リバーサルレート論のような主張もある。マイナス金利は経済を刺激するのではなく、むしろ逆に経済を下押しするということだ。

 銀行にとってマイナス金利は税金をかけられているようなものだ。銀行は追加でローンを供与するのではなく、むしろ信用を絞ろうとする。

 今のところ、マイナス金利は議論の俎上にのぼっていない。にもかかわらず、世界の名目金利はゼロに向かいつつある。そして、米国も「永遠のゼロクラブ」入りを果たそうとしている。

 https://www.ft.com/content/8a94b7bc-62d2-11ea-b3f3-fe4680ea68b5

 バーナンキ氏のかつての主張。

 https://www.brookings.edu/blog/ben-bernanke/2016/03/18/what-tools-does-the-fed-have-left-part-1-negative-interest-rates/

 そして、バーナンキ元議長の最新の投稿。コロナショックの前の、今年1月4日の投稿である。

 https://www.brookings.edu/blog/ben-bernanke/2020/01/04/the-new-tools-of-monetary-policy/

 リバーサルレート論を改めて。

 https://www.brookings.edu/blog/ben-bernanke/2020/01/04/the-new-tools-of-monetary-policy/