英字紙ウォッチング

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メキシコのシカーリオ

 晴れ。

 ニューヨークタイムズより。メキシコの麻薬カルテルの殺し屋、シカーリオについてのお話。迫力のある写真である。

 ヒットマンと呼ばれた男は、カルテルが自分の中にあった人間らしさをすべて奪い、モンスターに育て上げたと述べた。

 彼は10代のころから、ためらいなく、組織に命じられた殺人を続けてきた。シカーリオ、すなわち暗殺者であることを証明するためだ。そのことで、お金と権力、尊敬を勝ち取ることができた。恐怖が通貨であるその世界では、恐れられることが必要だったのだ。

 彼の告白によると、その世界ではサイコパスであることを自身望んだという。ゲレロス・ウニドスと呼ばれる麻薬カルテルによって、山の中にある訓練キャンプに送り込まれた。生き残るためには、このトレーニングを続けることが必要だった。

 数年のうちに、彼はメキシコのモレロス州においてもっとも残虐な殺人者の一人となった。わずか22歳であった2017年までに、100以上の殺人に関与したという。

 警察がその年に彼を拘束したとき、彼は200年以上の禁固刑が科せられる予定であった。しかし、彼を訴追する代わりに、当局は内部からカルテルをばらばらにする機会を彼に与えた。彼をモレロス州南部におけるカルテルを解体する、警察の極秘作戦の中心人物に据えたのだ。

 捜査官たちにとって、彼は金鉱だった。その州における殺人産業における完璧な参考書だったのだ。そして、彼にとって、政府は生命維持装置となった。メキシコには連邦レベルで証人保護プログラムがある。しかし、法執行機関の人間はそれをほとんど信用していなかった。漏洩や汚職、不完全さがあるのだ。

 直近の20年間において、メキシコの殺人は今日もっとも多く発生するようになっている。13年前にアメリカ政府が支援する麻薬戦争が始まって以来、その暴力は最悪なものになっている。

 殺人があまりに普通のことになったので、メキシコではますます麻痺したものになっている。

 https://www.nytimes.com/2019/12/14/world/americas/sicario-mexico-drug-cartels.html?action=click&module=Top%20Stories&pgtype=Homepage