英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

賃金インフレの懸念

 Gavyn Daviesより。株価の「メルトアップ」は「メルトダウン」に転じている。市場はインフレと金利上昇リスクに関心を移している。
 1月初旬の株価のユーフォリアのさなか、私の長年の同僚が米国の株式市場は2018年前半に大きな「メルトアップ」を経験し、その後災害のような下落に見舞われることになる、と予言していた。ここ数週間起きたことは、この予言に近い動きであった。
 昨年10月、S&P500指数ははっきりと加速段階に入った。2018年1月26日にはピークから13パーセント上昇した。しかし、その後に9パーセント下落。この下落は2016年2月の中国危機以降、上昇したわずかな部分を消し去っただけだが、市場のボラティリティは急上昇した。VIX指数は2010年代において3回ほど経験しただけの急上昇を示した。
 先週のミニクラッシュは何を引き起こしたのか。そして、このことは株式の将来にとって何を意味しているのか。
 まずはっきりしているのは、この株価イベントは米国で始まったということだ。他国よりも何よりも、米国でこそ株式のボラティリティは高まった。そのことは米国の市場構造が影響していることを指摘できる。米国市場ではCTAやリスクパリティファンドによって自動的にレバレッジが解消される。
 さらに、米国の現在の経済環境は、株式のリターンを追求するのに友好的な環境を提供しないことも指摘すべきだ。
 今回のミニクラッシュの始まりは、米国の1月の雇用統計がきっかけだった。賃金上昇率が2・7パーセントから2・9パーセントに加速したことが示された。これは一時的な要因で2月には反動があると思われるが、賃金インフレの可能性について市場がナーバスになっていることがはっきりした。
 ただ、インフレ懸念は現在のところ杞憂に過ぎない。FRBの2パーセント目標に明確な脅威は存在しない。以前よりもインフレリスクはバランスのとれたものになっている。実質金利でみると、確かにここ数週間上昇しているが、その上昇幅はわずかなものであり、株式の劇的な変動を説明するには債券金利だけでは十分でない。
 もう一つの投資家の関心を集めている要素が、FOMCが市場のボラティリティにほとんど関心を寄せていないことだ。それゆえ、3月の利上げが延期される可能性はかなり低いとみられている。
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