英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

コチャラコタ講演

 曇り。新聞休刊日で、テレビのニュースはユッケ食中毒を繰り返し報道している。こんなに被害者が多かったのかと正直びっくり。
 昨夜は円高のニュースが飛び込んできた。
 先日のバーナンキ記者会見のトランスクリプトが出ている。 
 http://www.federalreserve.gov/FOMCpresconf20110427.pdf

 ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁が、今後5年以内に失業率は5%近くに低下し、正常化するとの見通しを述べた。 http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4656
 最初に、経済見通しについて。
 FOMCで最も関心を呼んでいる経済変数は、実質GDPと失業、そして、インフレ。そして、コチャラコタ総裁は、2011年は2010年より改善するとみている。
 実質GDPは09年6月から7四半期連続で改善しており、平均で3%を下回る程度。これは1991年と2001年のリセッション後の回復基調に近い。2011年は若干回復のペースが改善し、3から3.5%の成長となりそうだ。
 ただ、2つの逆風がある。一つは、不動産価格の下落によって傷ついた、家計の資産改善の努力が依然として続いていること。もう一つが、1番目の問題に関連するが、多くの小規模銀行が資産の質の問題を抱えていることだ。
 FDICの問題銀行リストには、800銀行以上が登録されている。これらの銀行はリスクをとって貸し出し行動するより、資本比率を守るため、資産の成長や貸し出しスタッフを張り付けることをしようとしなくなる。
 2011年は経済の改善に伴い、資金需要も出てくるが、銀行の資産が貧困だと、ローンがついてこない恐れがある。
 労働市場に目を転じると、改善のペースはゆったりしている。失業率の改善は2つの方法がある。一つは、職を見つけることができたこと、もう一つは、職を探すのをやめることだ。人口に対する就業者の割合はほとんど変わっておらず、この点に留意する必要がある。
 失業率は今後5年以内に5%近くに正常化するだろうが、改善ペースはゆっくりだ。今年末の失業率は8から8・5%の間とみている。
 インフレについて。金融政策には長いタイムラグがあるので、Fedのマンデートに従えば、3年から4年後にわたってインフレ率が2%近くになるよう、政策を打つべきだという。
 その際、食料とエネルギー価格を除いたコアインフレーションを指標をして使うのが好ましい。
 2010年から2011年第1四半期にかけてのコアインフレ率は、年率1.5%になる。
 下記がこれまでの要旨部分。
 To summarize: I expect real output to grow slightly more rapidly in 2011 than in 2010. Household deleveraging and bank asset quality issues will remain a drag on the recovery. Unemployment will fall—but more slowly than we would like. Finally, inflationary pressures are currently low. I expect core PCE inflation to grow slowly over the course of 2011, while remaining under 2 percent.
 講演の後半は、こうした経済の現状認識に対応したFedの政策について言及されている。一つは金利を低くする伝統的な政策。もう一つは、less conventionalな長期債の購入措置。合計2.3兆ドルに及ぶ長期債の保有により、長期金利は低く抑えられている。結果、民間経済主体にとって長期投資はより魅力的になる。一説によると、こうした措置の結果、政策金利をマイナス2.5%にするだけの政策効果を達成できたという。
 そして、コチャラコタ総裁は、車のペダルと目標スピードの比喩を持ち出している。金融政策は10秒とか20秒遅れでドライバーがアクセルペダルを踏むようなものだと。結局、金融政策はシナリオ分析となる。
 総裁のベースラインシナリオに基づいて理論的に考えれば、105ベーシスのFed金利利上げが必要になる。ただ、一つは、Fed保有資産の売却ペースを考慮に入れなければならない。
 そうしたことをすべて勘案すると、もしコアインフレ率が2011年通年で1.5%を超えると、政策金利は50ベーシス引き上げる必要が出てくる。
 Fedが保有する資産を縮小するには、2つのやり方がある。一つは、償還分を再投資しない、もしくは再投資額を減らす。もう一つは保有資産の売却。コチャラコタ総裁は、資産縮小より利上げを選択した方が良い、との考えのようだ。
 自らの予測の誤りを率直に認め、なおかつ非常に平易な英語で分かりやすい。

 一方、ユーロは、トリシェ総裁が来月の利上げはないと発言したことを受け、下落。
 http://www.ft.com/cms/s/0/49dd7762-76f6-11e0-be6e-00144feabdc0.html#axzz1LLY5DrbF
 過去、ECBの金融政策を占う上で、トリシェ発言のキーワードとなってきたのが、「strong vigilance」という言葉。これが発せられると、次の理事会での利上げが示唆された。
 今回のトリシェ総裁の発言は、マーケットが期待するほどタカ派的でないと受け止められた。

 イングランド銀行金利据え置き。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2011/05/05/bank-of-england-still-holding/
 http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2011/042.htm