英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

イエレン副総裁

 久しぶりにのんびりとした週末。考えてみれば、3連休なので、世の中はレジャー三昧なのだろう。そんなリズムと程遠い生活に愕然とする。
 昨日東京は梅雨明けした。確かに空を見上げると、いかにも夏らしい青空と雲が広がっている。また、夏がやってきた。

 しばらくウォッチ作業から離れているうちに、世の中は動いていた。
 一つは米国の金融改革法案絡みの記事やコメント。米国の景気回復とインフレ・デフレ論争。そして、欧州のストレステストの話題が中心。

 まずは、昨日のFT money supplyブログの続きから。
 米国債の買い手(投資家)の変化について。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/07/16/global-build-up-of-us-debt-slows/
 (米国からみた)5月の外国人による米国債保有は6億ドル増とわずかに増えた。英国が一番の買い手であり、次いでカナダ。日本と中国は売り越しに転じた。

 FED理事会の新メンバーの上院での承認手続きに関するコメントはこちら。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/07/15/an-easy-ride-for-fed-nominees-on-capitol-hill/
 金融規制改革法案の審議に隠れて目立たなかったが、目を引いた点もあったという。
 イエレン副総裁候補に、米国の財政政策に対するスタンスを問いただす質問があった。つまり、もっと財政刺激策をうつべきか、それともただちに財政赤字の削減に着手すべきか。
 彼女の答えは全員を満足させるものだったが、本心は違うようだった。彼女はこう答えた。
 「失業率を引き下げるほど、経済は回復していないことははっきりしているし、議会がもっと景気刺激策策を、と考えても不思議ではない」
 同時に、持続可能な財政の道筋を示すことも重要だ、と付け加えることも忘れなかった。
 
 関連してもちらも。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/07/15/a-promise-and-a-warning-from-yellen/
 議会証言には、2つのエッセンスがあった。一つは、FEDにとって雇用の安定は最優先の課題だが、物価の安定も重視しなければならない。よって、適切な時期が来れば、注意深く慎重に、現在の臨時的な金融政策から脱却しなければならない。景気回復は芳しくないという最近の経済指標からすると、イエレン女史が追加緩和に言及しなかったのはサプライズだという。
 FEDの独立性に触れた点も外交的(diplomatic)だった。

 欧州ストレステストの記事はこちら。これはピムコのエルエリアンの記事。
 http://www.ft.com/cms/s/0/446a3e12-9049-11df-ad26-00144feab49a.html
 現状を平易によくまとめている。ECBがインタバンク市場を支えている状況。ストレステストはカタリスト(catalyst)になるのか。市場が安定を取り戻すには5つの条件が必要だという。
 一つはテストの対象が強い銀行、弱い銀行とも包含しなければならない点。いくつかの銀行はテストに失敗するかもしれないが、それはむしろ良いことである。その点で91銀行に広げた判断は良かった。
 2つめは、テストのシナリオがしっかりしたものでなければならない点。具体的には不動産やソブリンエクスポージャーに関するストレスで生じる潜在的な損失が現実的なものでなければならないということだ。
 3番目が情報の公開、透明性。
 4番目はテスト後、何が起きるのか政府は明確にする必要がある。必要であれば、資本再注入(recapitalisation)や再編、清算を行わなければならない。
 5番目。これがアメリカのストレステストとの違いでもあるが、テストの結果、欧州の銀行にconfidenceが生まれなければならない点。
 
 さて、数日遅れのコメントだが、ゴールドマン・サックスがSECと和解したというニュースについて。
 http://www.ft.com/cms/s/0/88691086-90d3-11df-85a7-00144feab49a.html
 RBSがゴールドマンを訴えることを検討中との記事。5.5億ドルという和解金額は、米投資銀行に課される金額としては過去最大。ただ、SECの訴追は10億ドルのfraudを行ったということからすると、高いのか安いのか。

 米国の経済指標が不振だったことからくる、double-dip recession懸念が再燃しているとの記事。
 http://www.ft.com/cms/s/0/acb350aa-911e-11df-b297-00144feab49a.html
 株や商品は下げ、債券が買われた。ドルは下落した。小売売上高と消費者信頼感指数が弱かったことに起因する。
 FEDが議事録で悲観的なコメントを載せたのも一因だ。2010年の成長率見通しを引き下げるとともに、デフレーションの恐れが高まっているとした。
 そして、世界経済の救世主とみなされていた中国の成長率の鈍化。

 バーゼル新規制にカバードボンド業界が不満を漏らしているという話。
 http://ftalphaville.ft.com/blog/2010/04/23/209721/the-covered-bond-industry-is-miffed-about-basel/
 中でも流動性規制とネットファンディングレシオに不満がある様子。高い質の資産からなる30日分の流動性を持つよう定める流動性規制は一見カバードボンド業界にとって良いように見えるが、ヘアーカット率が問題なのだという。結果、銀行は流動性バッファーとして、カバードボンドを持つ誘因がない。