英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

労働力不足インフレがやってくる

 曇り。

 米国の企業は従業員確保に苦戦している。賃金が上昇しているのに、人手を確保できないでいる。

 消費者の需要が増大しているのに、歴史的にタイトになっている労働市場が追いつけず、衝突が起きている。

 米国のいくつかの大手企業では、増大する消費者の需要に十分対応できるだけの従業員を確保できないで苦闘している。賃金が企業の利益を圧迫する水準にまで増大しているのに、である。

 今週、相次いで発表された決算では、イーコマース企業からファストフードチェーンまで、従業員を確保するむずかしさが浮き彫りになった。

 例えば、スターバックス。同社では賃金上昇が急速であると述べ、マクドナルドも非常にチャレンジングな雇用環境だと述べた。アマゾンも「労働(力不足による)インフレ」が起きると予想してみせた。

 見通せる将来において、われわれの供給能力の制約はひとえに労働力に起因するものになる、とアマゾンのCFOは述べた。それはこれまでアマゾンでは生じていなかった新しい現象であり、当然のことながら歓迎すべき事象ではないという。労働力不足が同社の生産性やサービスレベルに影響を与えつつある。

 すべての企業が雇用を確保すべく労働市場に殺到していると、UPSのトップは述べている。

 労働市場では大規模な退職が起きている。エコノミストが「グレート・リザイネーション」(大量退職の大波)と名付けた現象である。

 数百万人の労働者が職を辞し、そのキャリアを再考するようになる現象である。

 IBMからペンキメーカーまで、賃金のあり方を調整し始めている。それは新しい従業員にとって魅力的な水準にするだけでなく、既存の従業員を引き留めるのに十分な賃金体系にすることまで含まれる。雇用の引き留めはまさにチャレンジとなりつつある。

 今週の金曜日には雇用統計が発表される。9月にはわずか新規雇用者数は19.4万人だったが、これがどれだけ増えるかどうかが焦点である。

 雇い主の側は今よりも高い賃金体系を提示すべく動いている。賃金や福利厚生などの上昇ペースは2001年以降でもっとも高い。

 コストコはすでに最低賃金を自給16ドルまで引き上げた。これは2月のことだ。それを今週、17ドルに引き上げている。スターバックスも同様の動きを見せており、このことは平均賃金は自給で17ドルに来年夏にはなることを意味している。

 マクドナルドも賃金を引き上げているが、それ以上にスタッフが確保できる夜の開業時間を縮小せざるを得なくなっている。

 https://www.ft.com/content/b53a99ec-a835-4a5a-9efc-4d778515237b

 欧州諸国におけるガス価格は小康状態となっている。ロシアが来月から供給を増やすシグナルを送っているからだ。英国の指標価格は供給危機が和らぐとの観測から、20%低下した。

 英国と大陸欧州のガス価格は足踏み状態を続けている。

 ロシアの国営ガス輸出会社であるガスプロムは金曜日、プーチン大統領が欧州向けの貯蔵施設に供給するよう命じたため、2日間で国内の貯蔵を完了すると述べた。アナリストらが、供給をとめることで欧州のガス危機をロシアがあおるのではないかとの観測の後、このプーチン大統領による介入が明らかになった。

 英国の指標契約価格は20%下落した。ただ、今年の初めに比べると、ガス価格は3倍近く高止まりしている。しかし、今回の価格下落はエネルギー集約産業にとっては安心材料となる。経済もガス価格の高止まりにより停滞が予想されていたが、当初に懸念されていたほどではないとの観測が浮上している。

 インフレへの関心はガス価格高騰によって高まっており、中央銀行は利上げに踏み切るよう圧力を受けていた。

 取引業者らは、ロシアの追加供給が11月に実現しなければ、ガス価格はすぐに高値に到達すると警戒していた。しかし、モスクワからのシグナルは数カ月間続いた高値を緩和するに十分なメッセージだったと受け止めている。

 

 https://www.ft.com/content/097438c1-c0c0-4e6b-993a-9c502f05cf83