英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

怒れる米国人

 エコノミスト誌の最新号は米国大統領選。いよいよけんかが始まる、と題しつつ、口をぽかんを開けてしまうような活劇が展開しているが、米国政治は危険な領域に入ったと警告している。
 相撲にたとえると、土俵入り、という表現だろうか。リング上に候補者が入場し、大統領職をかけた大論争が始まろうとしている。
 2月1日に党員集会、予備選挙が始まり、1週間後にニューハンプシャーで投票者が集まる。そして、その後3月1日のスーパーチューズデーになだれ込み、7月までいくつもの集会が開催される。世界最大級の選挙トーナメントであり、その先行きは誰も読めない。
 全米の政治エリートや穏健派の有権者は現在、不信の最中にある。まず、ヒラリー・クリントンは、バーニー・サンダースの追撃を受けている。一方、右派の一段、ジェブ・ブッシュをはじめとする候補者たちは、クルーズ候補やトランプ候補にやられている。
 当初、候補の選択肢は、ヒラリーかブッシュか、と思われていた。しかし、ふたをあけてみると、世界でもっとも強力な職をめぐる競争は、アウトサイダーたちが主役となってしまった。いったい、米国で何が起きているのだろうか。
 体制派勢力がロープの端に追い詰められているのは米国だけではない。最近のフランスの地方選挙では、極右のナショナルフロントが躍進した。オランダではポピュリスト勢力が世論調査で任期を集め、ポーランドハンガリーではこうした勢力が政権についている。
 こういう西側諸国の有権者と同じように、米国人は怒っている。しかも、同じような理由で、だ。
 賃金は上昇することがなく、所得の格差が広がっている。文化的な脅威も経済的脅威と入り混じっている。2015年に行われた世論調査によると、白人のキリスト教徒は、米国においてマイノリティになっている。
 三番目の説明は、エリートたちは、米国の複雑な民主主義をもはやマネージできなくなっているというものだ。
 http://www.economist.com/printedition/2016-01-30