英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

もし大統領が五番街で人を撃ったら

 話題となっているNYTのトーマス・フリードマンのコラム。
 マケイン議員がなくなった後トランプ氏に対し、共和党や支持者から何ら制約するものはなくなっている。だから、共和党が下院や上院で過半数を失ったときのみ、トランプ氏を制約することができるだろう。それゆえ中間選挙は危機にさらされているのだ。
 2016年の選挙でトランプ氏に投票した共和党穏健派や独立か、都市郊外の白人女性にとって、11月に共和党候補に投票し、トランプ氏により制限を課すべきか否か、考えどころである。
 米国はロシアとの闘いに勝ち、冷戦で勝利した。われわれの価値や経済システムはロシアのそれより優れていることが証明された。しかし、2018年の中間選挙で危機に瀕しているものは、冷戦後の世界で誰が勝利しようとしているのか、だ。
 私たちが現在目撃しつつあるのは、トランプ氏がその行動によって米国政治をロシア化しようとしつつあることかもしれない。プーチン氏こそ冷戦後の勝利者になりうるかもしれない。
 ソビエトからの移民であるGorbis氏は、米国社会が法律と規範と原則に従った社会である点でソビエトより優れていると感じている。そして、人々が税金を実際に支払っている、というのは驚くべきことである、と感じている。
 しかし、冷戦時代がバックミラーの中で遠ざかるにつれ、トランプ氏は米国を地政学的にプーチン氏のロシアに近づけようとしているだけでなく、政治的にも米国をロシアのようにしている。
 トランプ氏は依然として、監査後の税還付の実態を明らかにすることを拒んでいる。それは彼が何かを隠していることを意味している。
 これこそ、トランプ氏とプーチン氏がお互いに理解しあい、認め合っているゆえんであるのだろう。
 https://www.nytimes.com/2018/08/28/opinion/trump-midterms-shoot-fifth-avenue.html

アルゼンチン再建策

 雨。25年ぶりという台風が接近中である。
 アルゼンチン政府は財政再建プログラムを発表した。これで危機を乗り越えられるか、不透明である。
 アルゼンチンの大統領は国際投資家や救済資金の出し手の信頼を得るため、新たな財政再建プランを公表した。アルゼンチンが危機状態にあることを正面から認めた。
 国民に向け、月曜日に熱のこもった演説を行ったマクリ大統領は、政府は投資家の信認を回復するために素早く行動する必要があると述べた。少しずつ問題を解決する先に、事態は良くなるという過剰な楽観論を信じている、と大統領は述べた。しかし、現実がアルゼンチン国民に示しているのは、より早く動く必要があるということだ、と大統領は述べた。
 https://www.ft.com/content/402a9d1a-af80-11e8-8d14-6f049d06439c

長期停滞の神話

 スティグリッツ教授。長期停滞の神話について。2008年の危機から回復する責任のある人々にとって、長期停滞論は魅力的に映った。というのも、早期の力強い回復に失敗したことを説明するのに都合がよいからだ。
 https://www.project-syndicate.org/commentary/secular-stagnation-excuse-for-flawed-policies-by-joseph-e-stiglitz-2018-08

米国の社会主義

 米国で社会主義の人気が高まっている。それは革命というよりも、民主党の不振によるものだ。
 8月20日モンタナ州の町で社会主義者らに支配された会合が行われた。彼らはインターナショナルをうたうのでなく、生産手段の公有を求めるものでもない。その代わり、都市の労働者の最低賃金を1時間あたり13ドルへ引き上げたことに感謝していた。そして、それを今後2年のうちに15ドルへ引き上げることを求めた。
 共和党員であれば、こうした人々に怒りをぶつけるだろう。しかし、過去を振り返ると、米国の社会主義者は、カストロに近いというよりも、民主党急進派と呼ぶべきだ。そして、彼らが挑戦しているのは、資本主義というよりも、民主党自身であろう。
 今日、米国において社会主義が今までになく動意づいている。1912年にユージン・デブスが社会主義の候補者として6%の得票を得た。それ以来の動きである。それまでDSAの得票数は6000票前後でずっと推移してきた。しかし、トランプ氏が登場した選挙以降、この得票数は上昇し始め、いまやその8倍、5万票を超える水準に達しようとしている。ギャロップの調査によれば、民主党員の約57%が社会主義に好意的な見解を持っている。
 しかし、世論調査が示す社会主義なるものは、その定義がはっきりしない。何十年にもわたり、冷戦は、少なくとも大半の米国人にとって社会主義を定義づけていた。しかし、30歳以下の米国人にとって冷戦は記憶にない。彼らにとって、社会主義は、共和党員が民主党員を非難する声、とくにオバマ氏を非難する声を聴くようなものでしかない。すなわち、社会主義とは、公的教育に公的資金をより注入したり、ユニバーサルな医療保険を導入したり、気候変動と戦うのはすべて社会主義となるかのようだ。もしそうなら、彼らは喜んで社会主義者になるだろう。
 オバマ時代、政治的なエネルギーは共和党の右派から出てきた。トランプ時代のいま、それは民主党の左派から出てくる。ある24歳の民主党活動家は社会主義運動にかかわった理由をこう話す。誰も、人々が貧しい本当の理由について話そうとしない。エスタブリッシュは、政治をキャリアとしてしかとらえていない。そこからは、道義も倫理も生じない。
 https://www.economist.com/united-states/2018/08/30/socialism-in-america

アルゼンチン混乱の余波

 雨。
 アルゼンチンの混乱が、債券市場におけるビッグネームを直撃している。米国の大手運用会社、フランクリン・テンプルトンがアルゼンチンに投資を行っており、12億ドルの損失を被ったという。アルゼンチンはスパイラル的に金融危機の状況に陥りつつある。
 この事例が示すのは、市場でよく知られた多くの有名企業も、危機においていかに間違った投資を行うのか、という好事例だ。
 これまで同社はアイルランドのようなディストレス国の投資において、債券投資で大きな利益を得ていた。しかし、今回はフラッグシップであるグローバル債券ファンドで大きな損失を計上した。
 アルゼンチンは先週、利上げを15%ポイントも行っており、金利は60%に達している。しかし、今年に入り、為替相場は半分に下落した。S&Pは金曜日、アルゼンチンのクレジットレーティングをさらに引き下げる可能性に言及した。落ちてくるナイフをつかむよりも、もう少しはっきりしたものが見えてくるまで、人々は荒れ相場を静観するだろう、という意見もある。すでに何度か、アルゼンチン投資でやけどを負った人々がいるからだ。
 フランクリン・テンプルトンだけではない。ピムコやブラックロック、ゴールドマンサックスなども大きな投資ポジションを持っている。
 https://www.ft.com/content/72cfe34c-aecc-11e8-99ca-68cf89602132
 ドイツ経済界は、ブレグジットの過程に警告を発している。ドイツの経済界首脳は、ブレグジット交渉の現状に警告を発し、英国政府に対し、その姿勢を和らげるよう求めている。ここ数週間で、ブリュッセル当局と、成立か不成立かという激しい交渉を行う予定だ。
 ドイツの経済界首脳は、「われわれは危機的な状況に陥っている。残された時間は信じられないほど短い」とFT紙に述べた。
 日本の経団連首脳も先月、同様の関心を示した。ドイツ経済界は、もし11月中旬までに交渉で合意がならない場合は、ドイツ企業としてはブレグジット交渉不成立の緊急プランを発動すると述べた。交渉が成立せず、移行プロセスなしの状態になるのであれば、国境関税体制で準備が整わないことになる。サプライチェーンに多大な影響を与えることになる。
 https://www.ft.com/content/ab2ffe38-acfc-11e8-94bd-cba20d67390c

リーマンショック10年

 リーマンショックから10年が経過する。それを回顧する記事が散見される。
 FTのジリアン・テット記者の記事である。冒頭、日銀の中曽・前副総裁からe-mailを受け取ったときのエピソードから記事は始まる。
 2007年の夏のことだ。中曽氏のメールは、べいっくのモーゲージやクレジット市場の問題で、金融危機が爆発しそうになっている、という警告から始まっている。
 テット記者はこのメールに驚いた。中曽氏の分析に同意できなかったからではない。07年6月以降、テット記者はFTの資本市場編集者としてロンドンで何本も記事を書いてきたからだ。驚いたのは、警告を発したのは中曽氏だったからだ。
 中曽氏はロンドンの反対側の東京で、難攻不落の要塞のような日銀のビルで働いていた。彼のカウンターパートである米国や欧州の中央銀行家は、明らかな関心を示していなかったからだ。
 それどころか、FRB前議長のグリーンスパン氏は、西側の資本主義市場の勝利を高らかにうたいあげていた。そして、その後任であるバーナンキ氏は、サブプライム問題の影響は限定的で、波及することはない、と述べていた。
 なぜ中曽氏はそれほどペシミスティックなのか。彼は、デジャブ、と答えた。その10年前の1997年、中曽氏は銀行危機に直面していた。バブル景気により、1兆㌦に及ぶ不良債権問題が起きていた。2000年になってテット記者が東京を去るときに、ほぼ終わりを告げていたが、世界の金融の歴史上は、日本特有の失敗と注記で記される、と西側の人間は考えていた。米国人やFedの人間は決して、日本と同じ問題で苦しむとは思ってもいなかった。
 https://www.ft.com/content/a9b25e40-ac37-11e8-89a1-e5de165fa619

マケインの遺言

 雨。相当に大きな台風が接近中である。
 サウジ主導の空爆により、イエメンの多くの子供たちがなくなった。サウジ側もミスを認めている。数十人が亡くなったという。本当に痛ましい。
 米国の支援を受けた同盟国が罪を認めるのは珍しい。
 サウジ側はイランの支援を受けたイエメンの反対勢力と戦っている。そのさなかの出来事で調査も約束した。
 サウジとその同盟国はすでに3年以上にわたって空爆と地上戦を続けている。しかし、人的な犠牲者数は増えるばかりである。
 https://www.wsj.com/articles/saudi-led-coalition-admits-errors-in-strike-killing-yemeni-children-1535822789?mod=hp_lead_pos6
 先日亡くなったマケイン上院議員の葬儀が行われた。葬儀は2時間半にわたるトランプ氏への激しい非難だった。葬儀は党派を超えて、その人生をたたえるものだった。
 出席者はオバマ前大統領からブッシュ氏、キッシンジャー氏まで豪華だった。マケイン氏の生前の言動をたたえた。マケイン氏がたたえられたのは、その高い市民性と党派を超えた精神的美徳であった。葬儀の出席者はかつてのライバルが並んだ。しかし、マケイン氏との党派の違いにも関わらず、彼らすっせ記者には共通する点があった。それはトランプ氏をよしとしない、という点だ。
 中でも彼の現職のときから通算しても、もっとも高く評価されるスピーチがオバマ氏のものだった。オバマ氏もその前任であるブッシュ氏も決してマケイン氏のことを手放しで称賛しなかった。というのも、両人とも2000年と2008年でマケイン氏と大統領選で争った苦い経験があるからだ。
 しかし、マケイン氏はトランプ氏だけは葬儀に呼ぶことをよしとしなかった。
 ブッシュ元大統領の批判は繊細なものだった。ジョンの声は常に、我々の肩越しにささやくようにやってくる。我々はこれ、すなわちトランプ氏よりは良いものである。米国はこれよりもより良いものである、と。
 https://www.ft.com/content/be1d8bc6-ae16-11e8-8d14-6f049d06439c