英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

米国の社会主義

 米国で社会主義の人気が高まっている。それは革命というよりも、民主党の不振によるものだ。
 8月20日モンタナ州の町で社会主義者らに支配された会合が行われた。彼らはインターナショナルをうたうのでなく、生産手段の公有を求めるものでもない。その代わり、都市の労働者の最低賃金を1時間あたり13ドルへ引き上げたことに感謝していた。そして、それを今後2年のうちに15ドルへ引き上げることを求めた。
 共和党員であれば、こうした人々に怒りをぶつけるだろう。しかし、過去を振り返ると、米国の社会主義者は、カストロに近いというよりも、民主党急進派と呼ぶべきだ。そして、彼らが挑戦しているのは、資本主義というよりも、民主党自身であろう。
 今日、米国において社会主義が今までになく動意づいている。1912年にユージン・デブスが社会主義の候補者として6%の得票を得た。それ以来の動きである。それまでDSAの得票数は6000票前後でずっと推移してきた。しかし、トランプ氏が登場した選挙以降、この得票数は上昇し始め、いまやその8倍、5万票を超える水準に達しようとしている。ギャロップの調査によれば、民主党員の約57%が社会主義に好意的な見解を持っている。
 しかし、世論調査が示す社会主義なるものは、その定義がはっきりしない。何十年にもわたり、冷戦は、少なくとも大半の米国人にとって社会主義を定義づけていた。しかし、30歳以下の米国人にとって冷戦は記憶にない。彼らにとって、社会主義は、共和党員が民主党員を非難する声、とくにオバマ氏を非難する声を聴くようなものでしかない。すなわち、社会主義とは、公的教育に公的資金をより注入したり、ユニバーサルな医療保険を導入したり、気候変動と戦うのはすべて社会主義となるかのようだ。もしそうなら、彼らは喜んで社会主義者になるだろう。
 オバマ時代、政治的なエネルギーは共和党の右派から出てきた。トランプ時代のいま、それは民主党の左派から出てくる。ある24歳の民主党活動家は社会主義運動にかかわった理由をこう話す。誰も、人々が貧しい本当の理由について話そうとしない。エスタブリッシュは、政治をキャリアとしてしかとらえていない。そこからは、道義も倫理も生じない。
 https://www.economist.com/united-states/2018/08/30/socialism-in-america