英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

米製造業の没落

 クルーグマン教授。赤字をしかる人々がこれほど危険な時期はないだろう。彼らの不平はワシントンから、メディケアの対象年齢を引き上げたり、短期的に財政緊縮に向かうなど悪い政策へ殺到している。しかし、ここにおいて彼らの影響力はそれほど強くない。しかし、彼らは我が国における政策議論において悪い役割を果たし続ける。
 赤字にこだわることがなぜ間違っているのか。2つのレベルで間違いを犯している。
 まず、考えられている債務危機を取り上げよう。現在のところ、GDPに対する債務比率は多かれ少なかれ安定している。そして、米国はファイナンスの問題の兆候があるわけではない。それゆえ、財政に何か恐ろしい問題があるという主張は、予算の状況が時間を追うごとに劇的に悪化するだろうという前提に立っていることになる。しかし、それがどれほど確かなのだろうか。
 たしかに、人口は高齢化していく。そのことはメディケアや社会保障にお金がかかることを意味している。債務がこの先大きく増大する見通しを立てられるのだろうか。
 http://krugman.blogs.nytimes.com/2016/10/22/debt-diversion-distraction/?_r=1
 米国の製造業は過熱状態にはない、という主張。米国における製造業の雇用者数は1979年6月がピークだった。このとき1960万人が雇用されていた。今年9月、その数字は1230万人だった。
 この製造業における雇用者数の下落は、今日の米国人の政治的、経済的な生活について、多くのことを示している。製造業に多くを負っている地域がなぜこれほど苦戦しているのか、なぜ大学を卒業していない高齢の米国人がこれほど怒っているのか、なぜ労働組合がこれほど弱いのか、うまく説明している。しかし、米国の製造業が衰退しているということを意味しているのだろうか。
 答えは歪んだ経済ジャーナリストたちが何度もノーだと示している。米国の製造業の産出は実際には増加している、と。最近のよい例はニューヨークタイムズのアッペルバウム記者だ。彼は次のように書いている。
 オートメーションにより、工場において作業員は少なくて済むようになった。しかし、米国で製造される製品の価値は2016年の第1四半期に最高値に達した。つまり、現在は我が国の歴史上もっとも生産的である、ということだ。
 BEAのデータによると、現在の製造業の産出は、1997年の幸福な時期よりも41%も高い。そして、この成長のおよそ半分は、コンピューターとエレクトロニクス産業ただ一つのセクターによってもたらされている。もしこの産業がなければ、製造業の産出は2008年のピークを下回り、1997年の21%高いだけに過ぎなかった。
 問題は物価による調整だ。デフレの調整がない場合、コンピューターとエレキ産業の付加価値は1997年より45%も高い。しかし、価格調整を行うと、この差は699%にもなる。これは半導体やコンピューターの品質が劇的に向上したことを示している。
 このことは、米国の製造業の健康状態を評価するうえで、これらの品質調整という微調整は混乱を招くかもしれない。
 米国の製造業の産出はその雇用の数よりもずっと成長してきた。しかし、それはブームとは異なる。
 https://www.bloomberg.com/view/articles/2016-10-19/no-u-s-manufacturing-isn-t-really-booming