英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

アベノミクスと1本の矢

 ワシントン・ポストでベンジャミン・フリードマン教授の記事。オバマ政権の経済政策を検証している。
 1933年の3月4日にルーズベルト大統領が就任した際、最悪の金融・経済危機の底にあったが、彼は就任2日後に金本位制を禁止し、4日間にわたるバンクホリデーを設けた。そして、銀行が営業を再開する際に緊急支援の仕組みを用意した。
 その後3ヶ月を超えて、FDRによる100日間の奇跡が生まれた。政権はさらなる手段を次々と打ち出したのだ。連邦政府による雇用の創出や社会福祉による支援、住宅ローンを支払うことのできない所有者への支援、銀行改革などだ。
 一方、バラク・オバマ大統領は2009年1月20日に就任した。このときもルーズベルト大統領のときと同様、最悪の金融・経済危機のさなかにあった。財政支援パッケージは7870億ドルもの巨額にのぼり、インフラ投資や雇用訓練、低所得労働者への支援などに使われた。こうしたお金は良い方向に使われたが、いま振り返ってみると、その量は不十分だった。
 その後、しばらく静かな時代が続いた。議会両院で民主党が多数を占めているのにも関わらず、大統領の最初の100日間で重要な経済政策法制は打ち出されなかった。その後の100日、さらに100日経っても同様だ。
 逆に、経済刺激策が法案化されると、オバマ政権の国内政策の主要テーマはヘルスケアに移った。オバマ大統領が就任した当時、アメリカ人の6人に1人は医療保険に入っていなかった。現在、5000万人の無保険者のうち2000万人をカバーできている。もし、メディケアがほかの州に広がると、この数はより大きくなるだろう。
 この達成は非常に大きいものだが、そのコストも見逃せない。代わりに、他の経済問題に割くエネルギーと注意が分散されたのだ。
 そのもっとも典型的な例が金融改革だ。
 https://www.washingtonpost.com/graphics/national/obama-legacy/financial-reform-policy.html
 クルーグマン教授。アベノミクスと一本の矢と題して心情を吐露している。
 アベノミクスの真の教訓は、金融政策の限界であると思うのだという。3つの矢が用意されたが、実際に放たれたのは金融政策の矢のみだ。財政の矢は実際には緩和的ではなく、緊縮的だった。主に消費税の引き上げによってだ。
 それゆえ金融政策のみに負荷がかかり、円安と株高をもたらしたが、インフレを起こすほど十分ではなかった。必要なのは3番目の矢ではなく、二番目の財政の矢である、と。
 http://krugman.blogs.nytimes.com/2016/08/15/abenomics-and-the-single-arrow/?_r=0