英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

アルメニア人のジェノサイド

 エコノミスト最新号は言論の自由について。
 ある意味、今という時代は言論の自由にとっての黄金時代かもしれない。スマートフォンは数秒のうちに新聞を呼び出すことができる。何十億以上のツイートが駆け巡り、フェイスブックやブログが毎日アップデイトされている。
 誰もがインターネットに自由にアクセスでき、ウィキペディアで調べることができる。
 しかし、監視機関の報告によると、自由に話すことはますます危険になりつつある。
 http://www.economist.com/news/leaders/21699909-curbs-free-speech-are-growing-tighter-it-time-speak-out-under-attack
 ドイツとアルメニア人のジェノサイド問題について。オスマントルコ時代の大量虐殺事件が今になって持ち出され、トルコとドイツの関係を左右するトピックスになりつつある。
 オスマン帝国が1915年から17年にかけて、100万人を十分超える多くのアルメニア人とクリスチャンを大量虐殺したことについて、トルコは悲劇だと考えている。しかし、これが「ジェノサイド」なのか、とアルメニアや多くの歴史家たちは疑問を投げかける。
 トルコはジェノサイドではなかったと主張している。にも拘わらず、20か国以上が公式にはこの虐殺をジェノサイドだと見直している。
 6月2日、ドイツがこの件の認識を問われることになった。ドイツの連邦議会がこの件をジェノサイドと呼ぶ決議を通したからだ。
 この投票はメルケル首相にとって、より悪いタイミングでの決議というわけではない。彼女はトルコとEUとの間の合意を取りまとめた主役である。メルケル首相は他の欧州諸国のリーダーたちより、一層このトルコとの取引を必要としていた。彼女は個々の加盟国が国境を乱暴に封鎖するのでなく、秩序ある、欧州の難民危機の解決を求めていた。
 しかし、トルコのエルドガン大統領はメルケル氏の努力を弱さだと解釈した。メルケル首相はドイツにおいて、独裁者に売り渡したとの批判にさらされることになった。4月に行われた世論調査において、68%の人々がトルコのEU加盟に反対している。79%の人々はトルコを信頼できない、と考えているのだ。
 この関係悪化はメルケル氏の過去の外交上の失敗の報復であると考える人がいる。2007年にメルケル首相はトルコのEU加盟申請をはねのけたことがある。当時、エルドガン氏は首相だったが、トルコを近代化させ、EUの加盟基準に合うように市民の自由を拡大すると述べた。しかし、この事件以降、エルドガン氏は西側に対抗し、オスマントルコの新たなスルタンになるべく政治的志向を変えたというのだ。
 この心理的な要因は最近のドイツとトルコの危険なやり取りを説明している。

 http://www.economist.com/news/europe/21699952-deciding-what-call-century-old-turkish-atrocity-name-and-shame