英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

monetary void

 今日は終日テニスをする予定だったが、雨でほぼキャンセルの見込み。残念だ。
 110回目の更新。最近はおざなりになっているので、気合を入れてまとめ読み。

 マーケット概況から。
 http://www.ft.com/cms/s/0/cf577414-cf63-11df-9be2-00144feab49a.html
 ドル安、債券は金利低下、株価はわずかに上昇。米国の雇用統計発表を受けての市場の反応だ。これでFedの金融緩和観測がより強まった。
 9月の非農業部門の雇用者数は9・5万人減少した。ネットの雇用増は、事前予想の7・5万人より低い、6・4万人にとどまった。失業率は9・6%のままだった。

 セントルイス連銀のブラード総裁は、CNBCに応えて、改善しつつある経済指標は、より一層の金融緩和が強く必要とされている、ということを意味していると述べた。
 株価は上昇し、ダウは心理的な上限であった1万1000ドルを5月以来初めて超えた。
 次の焦点は、第3四半期の決算だ。来週木曜日のアルコアからスタートする。
 今週末のG7については、最近レトリカルに言われている通貨(安)戦争がテーマになりそうだ。金曜日の人民元相場がドルに対して最高値をつけたが、これとは無関係ではない。
 豪州ドルは0.9858ドルと、1983年以来の高値をつけている。 
 債券相場は、ブラード総裁のコメントが出て以降、金利がやや上昇している。だが、雇用統計が出て以降は低下に転じている。5年ものの米国債金利は1%に近づいている。10年もの国債金利は、2・38%とフラット。
 日本の10年もの国債は2ベーシス低下して0・86%に。5兆円の経済対策を受けての動きだ。
 ユーロ周縁国のソブリン金利は、タイト化しつつある。ギリシャの10年もの国債金利は10%を切っている。中国によるギリシャ国債買い取り発言が好感されているようだ。
 
 米国の雇用統計関連の記事。
 http://www.ft.com/cms/s/0/eae5ee70-d30c-11df-9ae9-00144feabdc0.html
 雇用関連データが予想より悪かったことで、Fedによる追加金融緩和政策の最後のハードルがなくなった。
 米国の雇用が9月に9・5万人失われたというニュースは、1995年以来のドル安を加速させた。
 IMFの年次会合では、世界的な通貨戦争が主要なテーマになりそうだ。
 ドル安が続き、日本とブラジルが市場介入を行う。
 米国のガイトナー財務長官は、経常収支黒字国による内需拡大不足が
世界経済回復を阻害していると非難している。欧州財務相グループのユンカー議長は、人民元の過小評価に不平を漏らしている。
 通貨をめぐる不協和音は、主に米国と中国人民元の間だけでなく、ドル全面安についても生じている。
 多くのFed高官は、経済指標が改善しなければ、Fedはただちに行動すべきだ、と述べている。今回の9月の雇用統計は、最後のチャンスだった。
 具体的にFedはどう行動するかというと、数千億ドルの米国債を購入すると予想されている。これによって、長期金利を引き下げる。これにより、ドル安はさらに加速する。
 雇用統計でサプライズだったのは、地方政府の雇用が7・6万人減少したことだ。昨年の7870億ドルの景気刺激策効果が減退しつつあることを示している。
 民間部門は6・4万人の雇用を創出した。人口増加に対応するなら、月刊30〜40万人の雇用創出が必要だが、それを下回っている。

 次は英国の歳出削減策について。 
 http://www.ft.com/cms/s/0/6d914844-d18a-11df-96d1-00144feabdc0.html
 今後数年続く財政赤字減らしの痛みが広がってきたことを受けて、来年4月に歳出削減策を見直す動きが浮上してきた。
 2011年から12年に予定されている厳しい歳出削減策が、弱弱しい景気回復の腰を折るのかどうか、また、次の総選挙に与える影響との兼ね合いも考えなければいけない。
 10月20日に予定されているスペンディング・レビューでは、2011年〜12年に230億ポンドの歳出を削減し、2014年〜15年はそれが830億ポンドに増額されることを予定しているが、それは最終確定ではない。そして、今週、これらの歳出削減を2011年から始めることは困難になったことがはっきりしてきた。
 たとえば、高額所得者への子供手当てをやめることは、2013年から14年に実施される。防衛予算に絡む契約も、ペナルティなしに取りやめることは困難だ。学校の授業料値上げも準備不足である。
 2015年に予定されている次の総選挙の前に、構造的な財政赤字を解消しようという政府の目標は、遅れ気味になっている。
 ただ、ゴールドマンサックスによると、歳出削減の遅れても、英国の格付けや経済にそれほど大きな影響があるわけではない、としている。

 今日面白いと思ったのは、下記のスマギスピーチに関する記事。
 マネーサプライより。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/10/08/into-the-void/
 イタリア中銀総裁のスマギ氏のスピーチ。米国と欧州の金融政策の違いに余りに焦点が当てられすぎていて、そのほかの国々が無視されていると警告している。
 エマージング諸国の多くは、先進国の通貨に為替がペッグされていたり、資本規制などを行っているため、金融政策を持っていないと言ってよい。あまり意味のない「金融戦争」(monetary wars)という言葉を使って語るより、「金融上の欠落」(monetary void、適訳が思いつかない)に注意をもっと払うべきではないか、と主張している。
 リスクは、低金利によって創出された問題がエマージング諸国に流れ込み、これは世界経済にクリティカルな結果をもたらす危険性がある。
 米国は量的緩和に踏み出そうとしているのに対し、欧州ECBはその非伝統的金融政策のエグジットを模索している、と対照的である。
 欧州では家計や企業への貸し出しが回復しているのに対し、米国は依然貸し出しは減少している。また、日本型のデフレへの危険を避けるため、あまりに長期間にわたって低金利を継続しすぎたともしている。
 金融政策だけでは、雇用を生み出す景気回復をもたらすことはできない、というのも、金融危機のレッスンの一つであるという。