英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

パウエル会見

 6月10日のFOMC後のパウエル議長の会見録。

 冒頭、関係者に謝意を示した後、コロナウイルスが経済活動や雇用の急速な悪化をもたらしたと。消費や生産の指数は4月に落ち込み、実質GDPも記録に残るほど落ち込んだ。

 5月の雇用統計は予想に反してよかったが、2000万人近い雇用が失われたままである。失業率は13.3%にのぼるが、この数字も失業の状況を過小に表している可能性がある。そして、それを加味すると3%近い押し上げになるという。 

 さらに、こうしたマイナス影響は平等にくるのではなく、特に低賃金労働者に大きく影響している。女性やアフリカ系、ヒスパニックの人々に。

 ここ数週間、自動車や小売り業界でよい数字が出始めている。5月の雇用は多くのセクターで増えている。一時的なレイオフが終わり、人々は職に戻りつつある。

 多くの家計は刺激策としての給付や失業保険を受け取っている。しかし、経済は上向いているが、コロナ以前の水準にはまだまだ遠い。

 需要の弱さは物価を押し下げている。その結果、インフレ率はわれわれFedの目標とする2%を大きく下回っている。長期のインフレ期待は安定している。

 Fedとしては、経済に信用が流れることをサポートするため、幅広いアクションを取り続けている。信用へのアクセスがなければ、家計は日常生活で必要なものを削り、家を失いかねない。

 3月以降、Fed国債MBSの購入を相当額続けてきた。そのことによってより緩和的な金融条件を促すことができた。3月に市場の圧迫を経験して以降、市場機能は改善してきた。そして、それに伴って我々は資産購入のペースを減らしてきた。現在、少なくとも現在のペースで数カ月は国債などの購入を増やし続ける。そして、危機が完全に去ったと判断したときに、これらの緊急手段を道具箱に戻すだろう。

 しかし、強調しておくべきは、これらは貸し出しの力であり、消費力ではない。Fedはこうした力を特定の利益をもたらす形で与えることはできない。Fedはローンは返済されるという期待のもとに、健全な借り手、適格な幅広い借り手にローンを提供する。

 多くの借り手にはメリットがあるが、返済が難しい借り手にとっては別の意味を持つだろう。そういう借り手には直接の財政支援が有効である。

 今回のFOMCでは同僚委員らと、金利が下限にある中における金融政策の在り方について議論を続けた。議論した手段とは、フォワドガイダンスの明示や資産買い入れである。これらの手段は世界金融危機の後に導入した。同時に、歴史的に、あるいは海外の経験としてあるイールドカーブ目標政策についても見直しを行った(4~5ページ)。

 The measures we discussed included explicit forms of forward guidance and asset purchases; we used these tools in the aftermath of the global financial crisis, and they have become a standard part of our toolkit. We also reviewed the historical and foreign experience with targeting interest rates along the yield curve.

 そして、これらの手段が有益なツールとなるかどうかは、まだわからない。こうした議論を来るべき複数回の会合で続ける見通しだ。

 同時に、四半期ごとに見直している経済見通し、いわゆるSEPについても議論した。今回のSEPは主に今年後半の回復ぶり、ゼロ金利が続くもとで今後数年の見通しを示した。

 最後に人種問題について言及した。

 最初の質問はWSJのTimiraos記者。経済見通しについて。今後2年は、大規模な需給ギャップが生じると示唆されている。しかし、Fedは何ら手段を現時点では考えていない。Fedは「待ち」の戦略をとろうとしているのか。もし政策が変化するのであれば、それはどのように起きるのか。

 答えは、ゼロ金利は2022年まで続く見通しであり、パウエル議長としては金融政策は良い位置(in a good place)にあるというものだ。

 2番目の質問。インフレの見通しについて。これだけ低い見通しなのに、なぜ現在の政策が適切だといえるのか?

 パウエルの答えは、「我々の現在の政策スタンスは適切である」というものだ。5月の雇用統計のデータは我々にとってもサプライズだった。インフレに関して言うと、我々は128カ月間という景気拡大局面を経験し、それでも2%というインフレ率に完全に戻らなかった。それゆえに、われわれはインフレを引き上げる能力について、もっと謙虚にならなければならないと私は考える(8ページ後段)。

 So, I think we have to be humble about our ability to move inflation up,

  3番目の質問。経済が予想よりも良かった場合、どのようにFedが動くかわからない。もし経済が予想よりも良ければ、金利を低く保つという政策を取っ払うのか。政策を変更する具体的な雇用や物価の数字は何か。

 パウエル議長の答え。過去2年間、失業率は4%を下回った。インフレ率については、きわめて低い状態を許容する用意がある。われわれとしては利上げを検討していない。考えているのは経済へのサポートを提供することだ。

 4番目の質問。1930年代の大恐慌との比較が大量に行われている。それをみると、今回はより見通しが暗いのではないか。そして、ここ数週間の株価の上昇は経済の現実と関係ないとみているのか。

 パウエル議長の答え。大恐慌は良い事例だとは考えていない。当時とは大きな違いがあるからだ(10~11ページ)。第一に、今回は政府の反応が非常に早く、力強いものだった。そして、金融システムの状態もよい。資本が充足されている状態だ。

 そして、特に今後数カ月間が、経済を再開されるうえで判断する重要な数字となるだろう。第2四半期の数字は非常に弱いもの、歴史的な弱い数字になるだろう。

 5番目はAPの記者。長期の見通しでは失業の数字を変えていない。このことは、コロナは長期的には失業にダメージを与えないということを意味するのか(これは良い質問!11~12ページ)。

 パウエルの答え。長い目でみると、米国にとって生産性能力を左右するリスクとなる。長く失業状態にあると、人々は労働力に接近する能力を失う。スキルが衰え、戻るのに時間がかかる。労働参加率も低下する。

 6番目の質問。債券買い取りプログラムを続けているが、現在市場は不安定さを抱えていない。こうした買い取りプログラムを続ける意味は何か。二番目の質問は、中小企業について。プログラムMSLPはまだ走り出していない。

 7番目はブルームバーグの質問。

 https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20200610.pdf

アトランタの射殺事件

 曇り。

 今度はジョージア州アトランタ警察の警察官が黒人男性を射殺する事件が起きた。

 アフリカ系米国人に対する警察の暴力行為に対し、抗議活動が続いているさなか、レイシャード・ブルックス氏を警官が殺害する事件がアトランタで発生した。

 白人の警察官が射殺した事件を受け、アトランタ警察のトップが辞任した。米国内でシステマチックな人種差別に対する抗議活動が続いているさなかの出来事だ。

 アトランタ市長はアフリカ系米国人であるが、ボトムズ市長は土曜日、金曜夜に27足のブルックス氏が射殺された事件を踏まえ、警察部門トップのシールド氏が辞任すると述べた。

 ブルックス氏の死は、フロイド氏の死から3週間も経たないうちの出来事となった。全米では1960年代以来の抗議活動が広がっている。今回のアトランタの事件がどう影響するのか、見通せない。

 事件はレストランで、飲酒テストを受けるか否かで争いとなり、発生した。ブルックス氏はレストランの駐車場で眠っていた。現在、アトランタの射殺事件は捜査中だが、警察官の暴力的手段の行使について新たに制限を求める声が高まりそうだ。

 アトランタボトムズ市長は、民主党の大統領候補であるジョー・バイデン氏の副大統領候補に名乗りをあげている。ボトムズ氏は、黒人男性を射殺した警官の辞職を求めてる。

 https://www.ft.com/content/bb6e7777-3bd6-4564-b3f3-a7414a727376

 これはNYTより。

 ボトムズ市長が土曜日に、警察部門トップの辞任と射殺した警官の即座の処分を表明した。もみ合いによって、射殺された男性はテーザー銃をもぎとったが、だからといって射殺行為が正当化されるとは述べていない。

 https://www.nytimes.com/2020/06/13/us/atlanta-police-shooting-rayshard-brooks.html

 半ば秘密に包まれていたヘッジファンドルネッサンス・テクノロジーが今年20%の損失を計上していることがわかった。ジム・サイモン氏が創設したファンドも、市場の変動から逃れられなかったようだ。

 世界で最大規模かつもっともよく知られているルネッサンスは、今年二けたのロスを計上しそうだという。

 運用資産規模は750億ドル。コロナウイルスによってもたらされた市場変動を生き延びることはできなかった。

 https://www.ft.com/content/6bd17811-3205-454e-89e4-953dce6b4dfe

ハーツのエクイティファイナンス

 雨。

 経営破綻したハーツが、エクイティファイナンスを認められた。異例のことである。ハーツとしては10億ドルの資金を調達したい考えだ。

 経営破綻したハーツグループは、10億ドルを上限とする新規の株式発行が認められたと発表した。投資家は、破綻企業の株式を購入することで投機的な利益が得られる。破綻企業投資の熱狂がこうした異例のファイナンスを後押しした格好だ。

 今回の資金調達は破産裁判所が金曜日に認めた。これにより、同社の再建のための資金調達にベストということであれば、ハーツの経営陣は自由に株式を売り出すことができる。

 デラウェアの破産裁判所の判事は「株式による資金調達のコストのほうが、ローンのコストよりもずっと安い」と述べた。

 通例であれば、金融上の再建過程にある破綻企業は、重いコベナンツ条項や制限のついた割高なローンに頼ることが普通である。そして、株式による資金調達は通常であれば、選択肢に入らない。というのも、ある意味当たり前のことだが、破綻企業の株式価値はゼロに近いからだ。

 ハーツは5月に破産申請を行った。空港を拠点にレンタカー事業を営んでいたが、コロナウイルスによる旅行需要激減が直撃した。ハーツの株価は1ドルを下回っていたが、金曜日には3ドル近くを付けた。

 ビデオで開かれた裁判所の聴取において、担当弁護士はここ数週間、旅行需要は緩やかに上向いているが、ハーツの株価はこうした基礎的条件にリンクして動いていない、と述べた。若い世代の投資家に浸透しているロビンフッドのような株式取引プラットフォームが、こうした動きを助長しているという。

 一方、既存株主からは株式希薄化のリスクがあり、反対する声があがっている。しかし、債権者からは、損失のクッションができることで歓迎の声があがっている。

 https://www.ft.com/content/b5cd8a1d-7f76-4603-9310-b7b2a4a23cfb

米国株下落

 晴れ。

 米国株は6パーセント近く下落した。3月以来、最悪の下落となった。投資家はウイルスの件数が上向いていることに驚いたことが原因のようだ。

 米国と欧州の株式市場は3月以来の最悪の一日となった。Fedの経済見通しの評価が悪いものだったこと、それにコロナの第2波がやってくるのではないかという新たな関心からだ。

 S&P500指数は5.9%下落した。3月16日以来の下落幅である。

 欧州株も下落し、英国の指数も4%下落した。

 https://www.ft.com/content/bdd0451a-7ef9-4ba7-89b9-dba3312cc20d

ハト化するFed

 晴れ。

 Fedは2022年の終わりまで、利上げを見込んでいない。5月の雇用統計は予想以上に良かったにも関わらず、Fedのトーンはハト派的だった。

 Fedの幹部らは、ゼロ金利が2022年末まで続くとの見通しを示した。コロナウイルスの流行前まで失業が戻るには数年かかるとの前提である。

 今年6.5%のマイナス成長を見通しているFedハト派的なトーンは、中央銀行が経済ショックに立ち向かい続けるとの期待を強化することになった。

 声明文の内容は4月とさほど異なるところはなかったが、FOMCはすべてのツールを使って米国経済をこの挑戦的な時期に支えると述べている。そして、ゼロ金利を経済が確実性を取り戻すまで続けると述べた。

 会合後の記者会見でパウエル議長は、「われわれとしては、利上げを考えていない。利上げを考慮するということすら、考えていない」と述べた。

 Fedが経済見通しを公表するのは、昨年12月以降では初めてである。今年に入り、コロナウイルスが経済のアウトプットや雇用に影響を及ぼし、Fedの見通しでは経済の回復は2021年になるとみられている。この時点で経済成長率は5%となり、失業率は6.5%まで低下する見通しだ。

 2人の委員を除き、それ以外の委員らは2022年いっぱいまでゼロ金利が続くと考えている。コアPCEインフレ率は今年、1%である。それは2021年には1.5%、2022年になっても1.7%にとどまり、Fedが目標とする2%には届かない。

 3月以降、Fed金利を引き下げるとともに、バランスシートを急拡大させてきた。これらは金融危機当時よりも規模といい、スピードといい、ともに上回っており、そのことが米国の株式市場を急速に回復させている。

 市場がリバウンドしたことで、Fedにとっては次の手段を考える行き着く余裕が得られた。水曜日に、Fedは少なくとも市場機能がスムーズに維持できるまで、国債保有を増加させ続けると表明した。

 パウエル議長は同時に、フォワドガイダンスのより明確な形を検討していると述べた。1930年代に導入したイールドカーブに沿って金利のターゲットを決めるような政策への回帰もありうる。いわゆるイールドカーブコントロールだ。

 金融市場が安定する一方で、実体経済は苦痛に満ちた、長い回復過程に直面している。

 https://www.ft.com/content/e9d79319-492d-45cb-b491-fd61cc90effc