英字紙ウォッチング

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インフレ目標再考

 中央銀行の間で、過去何十年も続いてきた2%のインフレ目標を見直す動きが始まっている。
 インフレ率は過去5年間、目標を下回っていたが、ようやくFRBの目標とする2%に近づいている。しかし、エコノミストたちや中央銀行家らは、このような硬直した目標は間違いであると考え始めている。目標について別の選択肢があるのではないか、という議論である。当面あるいは永久に2%超を目標とする、という別の選択肢である。
 1970年代の高インフレ時代を経て、1990年代と2000年代に多くの中央銀行は2%の物価目標を掲げるようになった。2%はビジネスの決定や賃金交渉を妨げるほど高い水準でないこと、そして、金利を操作不可能にするほど低くないことがその理由だ。
 しかし、金融危機がこのコンセンサスを変えた。高いインフレ率の代わりに、現代の中央銀行は高齢化や長期にわたる低成長と高い貯蓄率という問題に直面している。これらはすべて実質自然利子率を押し下げる。
 非常に低い自然利子率は中央銀行にとって大問題だ。FRBエコノミストによる新しい研究も出ている。それによると、自然利子率が低いせいで、40%以上もゼロ金利制約に直面している。
 現代ピーターソン研究所のブランシャール氏は4%のインフレ目標を提案している。
 FRB内部ではサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が目標見直しの支持者だ。
 https://www.wsj.com/articles/rethinking-the-widely-held-2-inflation-target-1491138003
 FRBエコノミストらによるリサーチ。リセッション後に成長の余地を与えるため、2%超のインフレ目標を示唆している。
 https://www.brookings.edu/bpea-articles/monetary-policy-in-a-low-interest-rate-world/
 マネーバンキングブログより。同種の、インフレ目標引き上げの議論を展開している。世界のGDPの3分の2は、インフレ目標を設定する国々が占めている。問題は2%で十分か、という問いである。
 2%超のインフレ目標を支持する意見に対し、もっとも有力な反論は、これまで中央銀行は2パーセントの目標を信用できるものにするために、多大な投資を行ってきたというものだ。過去四半世紀の間、FRBは物価の安定に特別に成功してきた。もし物価目標を引き上げれば、こうした安定は難しく、かつコストのかかることになり、一時的には長期のインフレ期待が不安定化する恐れがある。
 しかし、最近、物価目標を3パーセントにすることを推奨する研究や提案が出ている。このうち4点が重要である。一つは、推計されている長期の均衡、自然実質利子率が低減していること、ゼロ金利政策が長く続くと予想されること、インフレ水準と物価の不均衡の散らばりの程度の間の理論的な関係が見出されることなどだ。
 http://www.moneyandbanking.com/commentary/2017/4/2/the-case-for-a-higher-inflation-target-gets-stronger