英字紙ウォッチング

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綱渡りの人民元

 中国の外貨準備高が減少し続けている。過去6年間でもっとも低い水準にまで落ち込んだ。中国人民銀行による人民元安定化政策の影響だ。かつて4兆ドル近くあった外貨準備は昨年12月時点で3兆ドルちょっとまで減少している。資本流出と中国政府による人民元防衛のためのドル売り人民元買い介入の影響を受けている。
 中国の中央銀行はここ何年か、過大評価であると広くみられていた人民元について、少しずつ減価させようという綱渡りの取り組みを行ってきた。しかし、長年、人民元が上昇することに賭けるのは、確かな戦略だとみられていた。企業や個人の間における現在の戦略は人民元が下落し続けるだろうというものだ。
 人民元があまりに急速に下落するのを防ぐために、中央銀行は過去17ヶ月で1兆ドルもの外貨準備を使い尽くしてしまった。
 昨年第4四半期において、ドル高と資本流出に刺激を受け、人民元は4%下落した。これ以上の下落を避けるため、中央銀行はここ数日、人民元の高値誘導を始め、人民元が自由に取引されている香港市場において流動性を極端に締め付けた。
 現在、北京政府は現在のような人民元管理のやり方に固執しており、先月開かれた政府の最高意思決定會議において、今年最重要の任務は人民元の安定であることを確認した。
 しかし、中国に対し、より厳しい姿勢で臨むと述べているトランプ氏の指導する米国の新政権が誕生することにより、この目標の達成はより難しいものになりそうだ。
 トランプとよりタカ派的なFedという組み合わせは、中国の為替政策にとって脅威である、という見方もある。
 一方、中国国内には、為替介入を停止し、人民元を市場価値に合わせて放置すべきだ、と進言する意見も出ている。人民銀行も、悪循環に陥りつつあることを認識しているとみられる。外貨準備を取り崩すことを繰り返していると、通貨を安定的に保ち続けることができるのかという疑念が浮上する。
 2015年8月に2%ほど人民元を減価して以降、中国人民元はドルに対して10%以上も弱くなり、主要貿易相手国のバスケットに対しては7%減価した。それでも人民元はやや過大評価という指摘がある。
 ここで疑問なのは、中国は外貨準備においてどれほどの外貨を必要としているのかという点だ。3兆ドルという外貨準備は中国の対外債務の2倍にのぼる。20ヶ月分の輸入もまかなえる規模である。
 しかし、M2と比較した外貨準備高でみると、十分とは言えないかもしれない。このM2対比の外貨準備は、IMFなどが利用している。
 http://www.wsj.com/articles/chinas-foreign-exchange-reserves-continue-falling-1483762144