英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

キプロス問題の既視感

 晴れ。まだ少し肌寒いが、近所の桜も満開は間もなくだ。
 キプロス情勢が引き続き熱心に報道されている。ただ、ギリシャショックの時と比べ、ユーロ圏の市場の反応は冷静だ。周縁国の国債金利はわずかに反応した程度だ。ユーロ圏の小国の出来事に過ぎず、ユーロ圏全体に広がる恐れはない、とみているのだろうか。
 http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324103504578376011392753862.html?mod=WSJASIA_hps_LEFTTopWhatNews
 http://www.ft.com/intl/cms/s/0/08e9ae20-9318-11e2-9593-00144feabdc0.html#axzz2OM98XQaF
 キプロス政府と国際債権者団との意見対立が続いている。しかし、ロシアに財務大臣が出かけたが、不首尾に終わり、キプロスに残された選択肢は少ない。預金課税を実行するか、銀行破綻を甘受し、ユーロから離脱するか、だ。
 ギリシャ危機の際のギリシャ政府とIMFなどとの意見対立と同じ構図のようにみえる。ある意味当たり前のことだが、危機になると、当該国と国際的な利害関係者の意見は激しく対立しがちになる。キプロス問題に既視感を感じるのは、こうしたことのせいなのだろうか。
 過激な銀行リストラ計画も新しい動きとして浮上してきた。同国第二位の銀行をつぶし、多くの預金者に負担を迫るアイデアだ。 
 明日日曜日の夜にブリュッセルにおいて、キプロスの命運を話し合うユーロ圏財務大臣会議が開かれる。
 その一方、資本移動などを規制する法案がキプロス議会で可決された。店舗を閉鎖している銀行が営業を再開したときに、資金流出が大きくならないように、資本取引などを規制する。
 今後の注目点は、銀行預金に課税されるか否か。預金者はATMから一度に260ユーロしか引き出せない。
 多くのオブザーバーは、何らかの形での銀行課税は避けられないとみている。突然の銀行課税提案を発火点に混乱が広がっている。しかし、キプロスの苦境を救うには、最初に提案された銀行課税の導入を真面目に考えるしかない、という結論に落ち着きそうだ。課税の境目は10万ユーロ。それ以下だと非課税だが、それ以上だと課税される。
 日本では銀行が破たんしても、預金の額が1000万円までなら全額保護される。この日本のペイオフの金額と比べてみても、10万ユーロ(いまの為替レートで、日本円にして約1200万円)という案は、それほど奇異な数字ではないように思う。
 
 クルーグマン教授は、キプロス問題をタックスヘブン問題ととらえて論じてる。そして、キプロスアイスランドを比較し、アイスランドが数年前にとった解決策に、キプロス問題を重ね合わせる。
 http://economistsview.typepad.com/economistsview/2013/03/paul-krugman-treasure-island-trauma.html
 アイスランドキプロスと同様、当時は外国人の預金が経済規模以上の大きさに発達した銀行部門を支えていた。そして、そのことがtoo big to fail問題を引き起こしていた。
 アイスランドは危機に直面して何をしたか。国内の銀行を破たんさせ、そのことによって外国人の預金者に損失を負担させ、国内の少額預金者を保護した。その結果は、決して悪いものではなかった…。
 しかし、キプロスアイスランドには違いがある。一つは、自国通貨をキプロスが持っていないことだ。つまり、アイスランドがとったような手段をキプロス自身だけで意思決定できない。
 クルーグマン教授は、キプロスにおいてもアイスランドのような解決策がとられると予想している。