英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

サマーズ辞任が意味すること

 今日は休日。気温が急に下がって、めっきり秋らしくなった。
 100回目の更新。飽きっぽい自分にしては、よく続いている。

 21日のFOMCを受けての反応。金が上昇し、ドルは下げた。
 http://www.ft.com/cms/s/0/b00ea0ba-c67f-11df-8a9f-00144feab49a.html
 Fedが追加金融緩和の準備があると表明したことで、通貨切り下げ競争が起きようとしている。国債の大量買取はドルの価値を引き下げるとの連想が働いた。貿易加重平均レートで1.5%、ドルは低下した。金は1300ドル弱を記録した。
 日銀とFedの量的緩和競争、とみるコメントもある。当然のことながら、すべての国が通貨を相対的に引き下げ、輸出を通じて経済を回復させることはできない。
 保有する国債を売却せず、非不胎化介入を行っているので、日銀の最近の為替介入は量的緩和の一種とみられている。ドルは円に対して下落して、84円44銭。ドル安によって、世界の中央銀行米国債やドル建て資産を購入するようになるとみられている。
 また、日銀が韓国ウォンやタイバーツに対して為替介入するとの観測も出ている。米国と中国の間では、通貨切り下げに関して緊張感が高まっている。
 米国債金利は2.51パーセントまで低下した。通貨安を見込んで金が買われているが、量的緩和によってインフレが引き起こされることについて、投資家はそれほど懸念していないことを示している。
 
 サマーズ辞任の続報。
 http://www.ft.com/cms/s/0/0611a72a-c66f-11df-8a9f-00144feab49a.html
 サマーズに象徴されるのは、グローバライゼーションは米国によって良いことであるという主張だ。米国の競争力を失いつつある製造業とその職は、より付加価値の高いサービス業に置き換わるという、一種楽観的な自由主義経済に対する信奉だった。しかし、現実はそのようには進まず、その主張は力を失いつつある。たとえば、アプライド・マテリアルをみてみよう。同社は今年初め、主任技術責任者やR&D部門を中国に移した。R&D部門は製造拠点とマーケットに近いところにあるのが良い、という考えからだ。
 これは従来考えられていたこととは反対のことである。米国はハイエンドな仕事が残り、中国はローエンドな生産を分担する、という考えだ。
 米国の貿易赤字をみれば、そのことが裏付けられる。米国は低コストの製造物だけでなく、飛行機のエンジンやコンピューター、タービンなどのハイテク製品も中国やブラジルから輸入している。一方、パルプや紙などローテク製品の輸出は増えている。米国で職を失っている人は、従前の給料の5分の1以下で働いている。そして、そういう職すら見つけられない人もいる。
 今回の大不況でこうした傾向に拍車がかかった。米国は失う以上の新しい職を創出できないでいる。サマーズの辞任は、オバマ大統領にとって、こうした現実を考え直す良いチャンスになる。経済界からどういう後任を選ぶのか、注目される。ゼロックスの前CEOであったAnn Mulcahyなど、女性の名前も取りざたされている。GEのジェフ・イメルトも候補に挙がっている。

 マネーサプライから少々。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/09/23/ecb-why-the-fed-has-it-easy/
 バークレイズキャピタルが、ユーロ圏諸国のインフレ率や成長率、労働市場の違い(divergences)について分析したレポートを出した。興味深いことに、ユーロ加盟国の成長率の違いは、収斂する方向にある。一方、労働市場の違いは、米国の州ごとの違いより大きいという。
 興味深いのは、ユーロ圏の11カ国について、テイラールールに基づいて算出した最適な政策金利だ。米国の比較的大きな11州について、同様の金利を算出した場合と比べて、ユーロ圏諸国の政策金利の差の方が大きかった。この差は、インフレ率と労働市場の硬直性に起因する。