英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

ブラードペーパー

 今日も夏日。朝方、涼しい風が入ってくる。

 今日のFT電子版トップニュース。
 http://www.ft.com/cms/s/0/e799d454-a0b5-11df-badd-00144feabdc0.html
 バークレイズが、リテールと投資銀行部門の統合ビジネスモデル(universal model)の分割に反対している、という記事。政府任命の銀行委員会が来年いっぱい、分割が妥当かどうか検討する。そういう規制が導入されたら、海外に移転するかについては、慎重に検討していると答えた。ちなみに、バークレイズの利益の8割は、投資銀行部門のバークレイズ・キャピタルが稼いでいる(10年上半期実績)。

 英国のプライベート・エクイティの老舗、3iに関する記事。
 http://www.ft.com/cms/s/0/3b02fdf4-a0c6-11df-badd-00144feabdc0.html 
 債務減らしのために、ドイツの投資先企業(企業価値で10億ユーロ相当)を売却することを検討しているという。マイケル・クイーン氏が3iのCEOに昨年初め就任してから、資産売却に注力している。負債の削減が狙いで、投資のペースも落としている。

 ジリアン・テットのコラムより。
 http://www.ft.com/cms/s/0/5ac2207e-a0ae-11df-badd-00144feabdc0.html
 株価はこの夏上昇しているが、取引規模は落ちている。投資家は取引するより、キャッシュを抱えている方を選んでいるからだ。個人投資家も、国債や投資適格級の社債ファンドに金をつぎ込んでいる。しかし、個人投資家も株式から逃げ出している。何か根本的なことが起きているのではなかろうか。
 将来が輝かしい時期になるという確信がもてなくなっただけでなく、将来が見通しにくくなったのではないか。グレートモデレーションと呼ばれた時期には、10年もの長期計画を策定することにためらいはなかった。しかし、金融危機でこの独りよがりは変わった。世界は予測もコントロールもできないものとみられるようになった。そんな信認を失った時期を20年間も続けている国として、日本の名前が挙げられている。

 マネーサプライより。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/08/05/uh-oh-capital-rules-might-increase-risk/
 バーゼルの資本規制がむしろシステミックリスクを高めるのではないかという指摘。

 トリシェ総裁は休暇をとれるのだろうか。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/08/05/trichets-halo-in-st-malo/
 フランス海岸のマローでいつも休暇をとるトリシェ総裁だが、cautious optimismとでも言うべき状況にある。ユーロ圏の状況は一服しているが、勝利宣言するまでには至っていない。しかし、もしここ数ヶ月の危機を脱したと言えるなら、ECBの信認は急上昇するだろう。

 件のブラード論文の要約に関する投稿。これが本日最も気に入った文章。
 http://blogs.ft.com/gavyndavies/2010/08/04/feds-bullard-is-concerned-that-the-us-may-be-headed-towards-a-bad-equilibrium-like-japan/
 来週火曜日のFOMCは久しぶりに興味深いものになりそうだ。米経済の減速が鮮明になり、FOMCメンバーが金融政策をどの程度緩和させるのかが注目される。市場も緩和を織り込み始めた。何人からもメンバーは、米国がデフレのわなに陥ろうとしているのではないかと考えている。先週のブラードペーパーは、その日本の先例を分析したものだ。ブラード総裁は、この日本型のシナリオが米国で起こる確率が高いとはみていないが、テロ攻撃のように、コンティンジェンシープランとして用意しておくべきだという。
 このブラードペーパーは非常に洗練されたもので、デフレの懸念が高まったときのためにも必読だという。しかし、かなり複雑で、専門家以外には解説が必要だ。
 そう言うが、この筆者の解説はかなり分かりやすい。B点を起点として、A点(均衡点)に向かうシナリオは望ましいが、ショックでdepressed conditionsが生じ、Fedが名目金利を引き下げられないと、実質金利が上昇し、経済をむしろ非活性化させるC点(unhappyな均衡点)に向かう、流動性のわなにとらわれる危険性がある。日本は2002年以来、このC点にとどまり続け、脱出する見込みもない。Fedはいま、B点にいて、C点方向に向かうのではないかと注視している。もしそうであるなら、Fedはより一層の金融緩和が必要か議論しなければならない。
 ブラード総裁は、米国債を買う量的緩和を提案している。