英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

クルーグマン

 ここ数日の雨があがり、夏らしい天気に。夏バテしやすいので、早寝早起きを心がける。また、読まなければいけない資料、本がまた増えてきた。
 もう7月も終わり。日経新聞私の履歴書はあまり面白くなかったが、最終回の今回は「あきらめず、がんばれ」。愚直だが、「あらかじめ、予定されている成功などはないのだ」というくだりもある。最近何かと落ち込みがちの自分に響く言葉だ。

 今日は、何かと話題を振りまくクルーグマン教授の最新ブログから。
 http://krugman.blogs.nytimes.com/2010/07/30/japanese-monetary-policy-wonkish/?src=twt&twt=NytimesKrugman
 日本はデフレのわなに陥っており、それは日本銀行が選択したものだ、という意見(sumner氏)に触れて、クルーグマンは「デフレのわなに陥っているのはその通りだが、それは慢性的なデフレは日銀のターゲットなのではなく、通常の金融政策が支持を失い、日銀も冒険的になろうとしないからだ」と述べている。
 GDP比のマネタリーベースは、1999年の10数%から2003年には20数%に急増したが、日銀はデフレ脱却に失敗したと結論づける。
 Sumner氏は、問題は2000年代に、日銀が利上げをしたことだ、という。これは、海外のエコノミストは日本のインフレ率は非常に低いとみていたのに、日銀はそう考えていなかった、という。
 これに対し、クルーグマンはこう述べる。ゼロ金利政策(ZIRP)は(本来は市場から退出すべき)企業を生きながらえさせるが、ZIRPにも関わらず、ニッポン株式会社は前例のない企業倒産に見舞われた。経済が落ち込んでいるときに緊縮策を説き、パーティの真っ最中にパンチボウルを下げることは、中央銀行のみならず、つらいことだ。そこで、日銀マンは、目標をずらすという、中央銀行家らしいやり方で「引き締め」の理由を探し始めた。
 また、2006年にGDP比マネタリーベースは減少したが、それは大きいとはいえず、いまFedに関して起きている論争と同じような状況が起きているという。つまり、非伝統的な金融政策の出口を何とか探している状況だ。日銀はインフレに対処するため、金利を上げるのでなく、超過準備を減らすことで対応した。
 為替については、スイスの例を見ればよい。スイス中銀はスイスフランが上昇するのを防ぐために、介入したが、失敗に終わった。
 以上より、日本から2つの教訓が引き出せる。デフレとの闘いは非常に困難であり、デフレに直面すると、中央銀行は引き締め政策の理由を探そうとクリエイティブになる。ただ、それは、デフレを好んで選択しているからではない。

 FT紙より。金融規制は、緩やかなものになりそうだが、そのことを批判している。
 http://www.ft.com/cms/s/0/5dee4f7a-9c1c-11df-a7a4-00144feab49a.html
 3年前の8月はノーザンロックが流動性危機に陥り、2年前は米国で金融危機が起きた。この数年で金融システムより安定的になり、行き過ぎたリスクテイクが減少し、納税者のおカネが救済に使われなくなったのだろうか。こたえはノーだ。BISは新しい規制で8年間の猶予を銀行に与えた。フランスやドイツの圧力に屈し、mortgage servicing rightsや繰延べ税金資産などをコア資本に算入することを認めた。これは先日のストレステストに続く流れである。
 英国では、大銀行の分割が検討されているが、改革は当初の意気込みとは異なり、理想から程遠いものに着地しようとしている。
 結局、問題はTBTF、あるいはtoo interconnected to failの問題に対処するにはどうしたら良いのかに尽きる。解決法としては、リテールと投資銀行を分けることだ。

 米国経済が減速している話。
 http://www.ft.com/cms/s/0/a7b55d0a-9bd2-11df-9ebd-00144feab49a.html
 第2四半期は2.4%成長に減速(第1四半期は3.7%成長、マーケットコンセンサスは第2四半期2.6%)したが、二番底の懸念はないという。
 次の焦点は労働統計。9.5%の失業率が下がるような数字が出ないと、Fedは追加緩和策の圧力をかけられるだろう。

 続いてマネーサプライより、ECBについて。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/07/30/the-ecb-at-home-on-the-range/
 7月のユーロエリアのCPIは1.7%に上昇。ターゲットレンジである2%の上限に近づいてきた。2008年半ばには4%をつけ、昨年7月にはマイナス0.6%まで低下したが、今回のCPIは経済が平時に戻りつつある証だと考えてよいのだろうか。来週木曜日はECB理事会だが、過度の楽観論は、最近のFedやBoeのトーンと調和しない。トリシェが直面している問題は、政策金利の下限は1%であると強く示唆していることであり、このことが政策に上方バイアスをかけている。

 米国のスワップ金利国債金利が逆転した話。リスクフリーレートの国債を、スワップ金利が下回る、いわゆるマイナススプレッドに陥った。
 http://www.ft.com/cms/s/0/e803df02-9b33-11df-baaf-00144feab49a.html
 理由は銀行が発行した大量の債券。72億ドルが調達され、固定金利から変動金利スワップされた。これがユーロ危機は最悪期を脱したという楽観論と一致した。Libor金利も下落。金利スワップ市場の混乱で、あるヘッジファンドが巨額の損失を被ったとの話も出ている。

 ムーディーズが米国のトリプルA格付けを見直す話。
 http://blogs.ft.com/money-supply/2010/07/30/moodys-warns-on-us-aaa-rating/
 スペインは6月からの見直しで、おそらくトリプルA格付けを失うだろう。

 最後に昨日触れたブラード総裁の記事をちゃんと読む。