英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

中国の自殺工場

 今日は曇り。午前中は散髪に出かける。ゆっくり仕事をして、遅い昼食をとったらもう3時。休日の一日は早い。

 今日の日経新聞も取り上げていたが、中国・深せんにあるアセンブリー工場(Hon Hai Group)の自殺問題をFT紙が取り上げている。iPadキンドルなどを生産している工場の陰の部分がクローズアップされていて興味深い。

 http://www.ft.com/cms/s/0/2f9a03c0-6a86-11df-b282-00144feab49a.html

 FT紙報道のエッセンスは以下の通り。
 ・世界最大のelectronics contract manufacturerであるFoxconnで自殺が多発している。
 ・今年に入ってすでに12人がビルから飛び降り、10人が死亡。
 ・工場のある深せんの工場における労働条件への批判が起きている。
 ・ただ、その批判は目新しいものではない。NikeWalmart、Timberlandも批判を受けていた。
 ・Foxconnの場合は、プレッシャーや孤立した労働環境が自殺の原因だと批判されている。
 ・Foxconnの顧客は、ナーバスになっている。Sony、HP,DellAppleなど。
 ・ただ、Foxconnは受注を失うことはないだろうとの見立てもある。もはや、世界の電機産業の中枢になっているためだ。
 ・中国の唯一の競争力は安い労働力にあり、中国の発展は搾取工場(sweatshops)の山の上に築かれたものなのだろうか。
 ・状況の改善には政策変更が必要だが、共産党政権では民主主義の導入を望むべくもない。
 ・先週金曜日には、Foxconnは賃金の2割値上げを発表した。これまでは1ヶ月の基本給が950人民元(139米ドル)。残業含めて2000人民元。中国全土で80万人を雇用している。
 ・Foxconnの昨年の売上高は610億ドル。
 ・オーナーのGou氏は1950年の台湾出身。他社の製造機密を漏らさないことで、メーカーの信用を得て、成長してきた。それゆえ、工場を外部に公開することも避けてきた。
 ・Foxconnの労働者の生活は厳しく統制されてきた。食事は3食、工場の食堂で出されるが、一定時間に食べないといけない。トイレに行く時間も制限されている、などなど。
 ・だが、労働者の評判は特に悪いというわけではない。
 ・中国では1985年から1995年の一人っ子政策時に生まれた世代が労働市場流入し始めている。彼らは都市部に流入した労働者世代とは違う価値観を持っている。職場で精神的なトラブルがあると、彼らは傷つきやすい。これが自殺につながっている可能性があるという。
 ・労働者の自殺のトラウマを抱えているのは、Foxconnだけではない。フランステレコムでも同様のことが起きているという。
 ・今週、Gou氏は現地に駆けつけ、工場の周りを1.5メートルのネットで覆った。しかし、その数時間後、1人の若い男が飛び降り自殺をした。

 良いリポートだと思う。そして、最後のエピソードは何とも痛ましい。