英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

財政の崖第二弾

 晴れ。少し風が残る。
 昨日決着した財政の崖。最終的に民主、共和両党の合意がなり、米国発のリセッションが避けられたことで、世界の株式市場は上昇している。しかし、2月末にも財政の崖第二弾が待ち受けていることに加え、今回の合意の経緯があまり好ましいものではなかったことから、万々歳の結末、というわけではなさそうだ。
 また、こうした交渉経過をみていて思うのは、米国で財政均衡主義を主張する政治勢力がきちんと存在感を持っていることだ。たとえば、上院共和党のマコネル議員は”to put our country back on a sound financial footing."と述べている。日本では財政均衡主義や本当の意味での小さな政府を主張する勢力は皆無(みんなの党?)であり、その意味で政治的な主義主張に大差はない。 
 
 今回の緊張に満ちた交渉は、オバマ大統領と議会共和党の関係を悪化させるとともに、共和党内部にも亀裂をもたらした。2月末にも財政の崖第二弾が待ち受けており、困難な交渉が予想されている。
 特に、下院共和党の議員の間で、上院の共和党増税のみ合意したことについて、不満が大きいことが注目される。
 http://www.ft.com/intl/cms/s/0/58a511a4-5509-11e2-a628-00144feab49a.html#axzz2GoeFickG
 とりあえず当面の危機を乗り切り、株価は上昇しているが、2月に次の崖が待ち受けている、と指摘している。ワシントンのムードは「ebullient」ではないという。ムーディーズは、今後数か月で一層の財政赤字削減策がとられない場合、S&Pに引き続いて米国債の格下げを検討するという。
 そして、2月末に再来する財政の崖第二弾は、議会が連邦政府の債務上限を引き上げないと、政府は種々の支払いができなくなる恐れがある。次の焦点は3月1日と3月27日。次の合意がならない場合、3月1日には軍事予算や国内の種々の予算支出ができなくなり、3月27日には政府閉鎖が見えてくる。
 今回の交渉の経過をみる限り、再び財政の崖が現実化することは不可避の情勢にある。議会共和党は、債務上限問題は、オバマ大統領を歳出削減に向かわせる交渉材料になる、とみている。
 http://online.wsj.com/article/SB10001424127887323689604578217972804225126.html?mod=WSJ__LEFTTopStories 
 一方、財政の崖が合意され、富裕層向けの税率が引き上げられる前に、ゴールドマンサックスの幹部に株式が付与されていたと報道されている。幹部の中には、ブランクファインCEOも含まれている。米国の場合、こうした措置はSECへの報告書で開示されているようだ。
 http://online.wsj.com/article/SB10001424127887323374504578217921515521236.html?mod=WSJ_hp_LEFTWhatsNewsCollection
 財政の崖について、マンキュー教授とクルーグマン教授らのコメント。
 http://blogs.wsj.com/economics/2013/01/02/academic-economists-react-shortfalls-of-fiscal-cliff-deal/ 
 Bill McBride氏は、多くの論者とは異なり、ポジティブに今回の交渉を評価している。問題は、長期的な債務の持続性がまだ議論として残っていることだと指摘している。
 http://blogs.wsj.com/economics/2013/01/02/academic-economists-react-shortfalls-of-fiscal-cliff-deal/
 結局今回の財政の崖交渉で、だれが勝利したのだろうか。富裕層は増税となったにしても、クリントン時代より税率は低い。日本ほどひどくはないが、米国も、歳出に見合う税収を得られないでいる。
 http://economistsview.typepad.com/economistsview/2013/01/so-who-won-the-fiscal-cliff-fight.html