英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

揺らぐイスラエル「ガザ統治」の正統性

 晴れ。

 イスラエルガザ地区における統治の正統性が縮小し続けている。中東は戦争状態にある。

 イスラエルレバノンと接数北部国境は、戦闘によって発生した煙と森林火災でいっぱいだ。市民は避難し、ヘルメットをした兵士が続いている。一時間ごとにヒズボラが発するミサイルが国境内で爆発し、イスラエルがこれに対する防衛煙幕を張っている。

 これはもう戦争状態である。イスラエル東部ではシリアの空域をイスラエルが攻撃している。西側では、米国の空母が地中海に浮かんでいる。これはイランとの戦争を抑止するためである。そして、南部地域ではイスラエル軍の大規模な軍隊がガザ地区に入ろうと準備をしている。

 イスラエルハマスが攻撃してから15日が経過した。しかし、今のところ地上侵攻は始まっていない。その理由の一つは、最後の最後まで外交努力が続けられているからだ。10月20日にはカタールの仲介により、ハマスに捉えられていた米国系イスラエル人2人が解放された。翌日には回路で停戦を求める国際会議が開かれた。エジプト経由で限定された量ながら、支援物資も入るようになった。そして、人質の解放交渉が続けられている。

 この遅れは、イスラエルに次のような質問を投げかけている。どのような種類の戦争を欲しているのか。つまり、激しく、素早い戦争なのか。それとも忍耐強く、長期間にわたる戦争なのか。10月19日に戦時内閣が会議をテルアビブで開いた。その7時間後、ネタニヤフ首相が議長の会議は、結論を得ることなく会議を終えた。ギャラント防衛大臣は、短期の、鋭い戦争を求めているようだ。ネタニヤフ首相はそれに対し、ためらいを見せている。

 イスラエルは同時に同盟国から計画の修正を求められている。「ショック・アンド・オウ」攻撃でなく、より制限され、長期にわたるキャンペーンを追求すべきだというものだ。10月22日、ブリンケン国務長官イスラエルにアドバイスを行い、イスラエルは結果を求めるために何を追求すべきで、何が最適であるかを考えるべきかと述べたという。

 1973年や2006年は、イスラエルに停戦を呼び掛けた。

 イスラエルの公表している目標は拡張的なものだ。ハマスの能力を破壊し、その権力を奪うというものだ。それは具体的には500キロに及ぶ地下トンネルを除去し、家々ごとに戦闘を行うことになる。ハマスのロケット発射能力を除去する、ということは、ロケットを操る人間を除去することを意味する。

 アメリカ政府もネタニヤフ政権にそれほど支持を与えていない。武器供与とともに、外交面でもイスラエルを支援している。国連安保理では、拒否権を発動した。そして、イスラエル自衛権を提案した。にもかかわらず、イスラエルに対してホワイトハウスははっきりと、戦争放棄に従うよう求めている。そして、市民の被害を最小にするよう求めている。

 イスラエルはアラブ世界の反応を考慮に入れる必要がある。ガザでこれ以上急速に被害が膨らむと、ヒズボラやイランの反応を引き起こす危険性がある。イスラエルは第二戦線を戦うはめになる。

 10月19日にイエメンからイスラエルに向けて発射されたミサイルは、イランの代理人の選択肢が数多くあることを知らしめた。イスラエルアラブ諸国は10月7日以前は、関係改善に進んでいた。とくにUAEとサウジである。

 イスラエルにとって長期戦は軍隊を泥沼にはまらせることになる。4万人とされるハマスの戦闘員などが長期間にわたって隠れながら攻撃をしかける、底なし沼の戦いを仕掛けてくる可能性がある。戦争が長期化すれば、経済に打撃を与える。予備役の兵士は、労働力の相当数を占めており、ガザ地域やレバノンに近いエリアから脱出する動きも出てきそうだ。実際、1973年と1982年の戦争と動員の後、イスラエルは長期にわたる不況に苦しんだ。

 とすると、イスラエルが正統性を西側諸国やアラブ諸国から得るためには、パレスチナ人に一種の統治に参加させる計画の準備をすることであろう。

 バイデン大統領は10月21日、二国家の解決をあきらめていない、と述べた。

 https://www.economist.com/middle-east-and-africa/2023/10/22/israels-window-of-legitimacy-in-gaza-is-shrinking